2025.1.31
健康経営 セルフケア生産性の低下や離職にもつながる企業ができる更年期症状への対策とは?理学療法士が徹底解説
女性の活躍推進により、40〜50代の女性が管理職などの責任のある立場につくことが増えていますが、更年期症状に悩む年代でもあります。更年期症状によって仕事に何らかのマイナスの影響があった人は専門家の推計で100万人を超えるとされ、生産性の低下や離職につながるリスクも高く、企業側として更年期症状の対策や環境を整えることは喫緊の課題となっています。
目次
40代半ば以降の従業員は更年期症状に悩み始める?
厚生労働省の「令和5年版働く女性の実情」によると、令和5年の女性の労働力人口は3124万人とされ労働人口総数に占める女性の割合は45.1%という結果が出ています。管理職につく世代である40代〜50代の割合は働く女性の約4分の1を占めており、この世代は更年期にあたる世代となります。慢性的な労働力不足の今、更年期の症状を抱えた女性が働きやすい環境を作ることは重要な課題となります。
具体的な「更年期」と呼ばれる期間は、閉経を挟んだ前後5年のトータル10年の期間を指します。閉経の平均年齢が50歳くらいとされているので、45歳~55歳の年代が「更年期」にあたる方が多いということになります。
更年期症状は生産性の低下や離職につながる
「更年期」は誰にでも訪れる時期ですが、症状に関しては異なります。全く更年期症状に悩まされることなく更年期の時期がすぎる方もいる一方で、適切な対処を行わなければ生活がままならない状況になってしまう方もいるというのが実情です。
具体的にどのような症状があり、どんなことに悩む声があるのかをご紹介します。
「会議中にほてりの症状が起こり、汗が止まらずに集中できないことがあった」
「頭がぼーっとすることが多く、これまではなかったようなミスをすることが増えた」
「生理がいつくるかわからなくなり、服を汚すことがあって困った」
「更年期による疲労や倦怠感を理解してもらえず、人間関係に苦労した」
「身体の症状は少なかったが、精神的な落ち込みがありうつっぽくなっていた」
など、症状は人それぞれ全く異なります。このように、集中できずにミスが増えることで生産性の低下につながってしまったり、精神的な落ち込みなどにより休職や離職につながる場合もあります。
こういった背景から経済産業省が女性特有の健康課題に対する社会全体の経済損失の試算結果を公表しています。
女性の更年期症状による経済損失は1.9兆円、男性更年期でも1.2兆円の経済損失があると試算されています。
「女性特有の健康課題による経済損失の試算と 健康経営の必要性について 令和6年2月」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/jyosei_keizaisonshitsu.pdf
更年期の症状
更年期の症状は大きくわけて5つあります。
【自律神経症状】
- ◉うつ症状
- ◉精神的な疲労
- ◉頭痛 など
【血管運動症状】
- ◉ホットフラッシュ(のぼせ/ほてり)
- ◉冷え
- ◉動悸/息切れ など
【消化器系症状】
- ◉食欲不振
- ◉胃もたれ
- ◉下痢/便秘 など
【泌尿器生殖症状】
- ◉尿漏れ
- ◉頻尿 など
【運動器症状】
- ◉肩こり
- ◉腰痛
- ◉関節痛
- ◉骨粗しょう症 など
症状は多岐に渡り、個人差もあります。特に40代では更年期の症状であると気が付かずに不調を感じられることが増えてくる場合があります。
更年期のメカニズム
更年期のメカニズムを簡単に説明します。
加齢により卵巣の機能が低下し、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌ができなくなってくることが更年期の症状の原因となります。脳からの指令に卵巣が応えられなくなることで、エラーが起こってしまい、身体にさまざま症状が引き起こされるのです。
ただ症状の出方には個人差があり、女性ホルモンの低下による脳のエラーだけでなく、実は仕事や家庭環境や心理的な要因も大きな要素になるといわれています。
従業員の更年期症状の対策がなぜ重要なのか?
更年期症状の原因に、加齢による女性ホルモンの減少だけでなく、仕事や家庭環境、心理的な要因も大きな要素になることを前述しました。
これらの心理社会的要因はどのようなものあるのか以下にご紹介します。
- ◉仕事上の責任
- ◉職場における人間関係
- ◉自分自身の健康の不安
- ◉女性性の喪失感
- ◉将来の不安
- ◉夫の退職,病気
- ◉子供の自立
- ◉両親の介護
- ◉知人の不幸
このような要因があげられ、こういった背景もあることを企業側は念頭にいれておく必要があります。下線の項目に関しては企業側が従業員に対してできる対策を講じることが従業員の生産性の低下や離職率を下げることに繋がってきます。(産業精神保健 31(1): 15–20, 2023 DOI: 10.57339/jjomh.31.1_15:参考)
具体的に職場でどのような問題があるのかNHKによる大規模な調査(※)によりわかっています。
(※「女性の健康とメノポーズ協会」、「POSSE」、「労働政策研究・研修機構」、「#みんなの生理」との共同企画で2021年7月)
これらのアンケート結果を見ると、当事者を含めて従業員の更年期に対する知識不足により生じている問題であることが伺えます。
企業で取り組む従業員の更年期対策とは
更年期症状に対する対策として最も優先的に行われるべきこととしては、更年期に関するヘルスリテラシーの向上のためのセミナーや講習会であるといえます。
具体的に更年期症状の対策を講じている企業の事例をご紹介します。
【丸井グループ】
更年期に対する課題に対して、2013年から女性の健康課題をサポートするために全事業所に1人「女性ウェルネスリーダー」を配置しています。2017年からは年に4回学習と情報交換をするウェルネスリーダー会議を実施し、学んだことを各リーダーたちが職場に持ち帰り、事業所の社員に教えて対話を広げることで職場への継続的な意識が浸透したといいます。
【損害保険ジャパン】
更年期に関して「治療で良くなることを知ってほしい」「更年期障害の要因には環境もある。サポートする、という思いを周囲が持つことが大事」とし、グループ会社と更年期をテーマにオンライン研修を実施しています。研修を実施した背景に「女性が健康で働くことが会社全体の生産性や幸福度向上につながる」(人事部担当者)ことを挙げ、参加した男性を含め300人近くの社員からは「職場や家庭で理解が進むと、(当事者との)関係づくりがスムーズになる」などの感想が集められました。
【エムティーアイ】
生理日を管理するアプリなどを運営しているエムティーアイでは、福利厚生で婦人科受診を支援することや、低用量ピルなども会社が負担する制度を設けています。
【サイバーエージェント】
IT企業のサイバーエージェントは、“生理休暇”という名前を無くし、女性社員が取得する全ての休暇を「エフ休」(エフ=FemaleのF)という名前に統一しています。女性特有の体調不良の際に使えるように、有休の特別休暇を月に1日追加しています。休む理由の言いづらさをなくすことで、取得しやすいように配慮しています。
【河村電器産業】
男女ともに取得できる「健康休暇」を設け、より休暇申請をしやすいように名称を変更しています。
このように多くの企業が少しずつ女性特有の症状に対策を講じていますが、まだまだ現状としては不足しています。
個人で取り組む更年期の対策とは?
更年期の症状は多岐に渡ることをお伝えしてきました。一般的な症状としてホットフラッシュやほてりなどの症状や、精神的な落ち込みなど、どのような症状が組み合わさり、症状が現れるのかは共通していません。ただ更年期の症状の中で共通して起こる可能性が高いものがあり、それが骨粗しょう症や筋力や関節の機能の低下です。女性ホルモンの役割として骨を作る作用があり、この女性ホルモンが更年期に低下することで骨が弱くなるのです。骨粗しょう症と診断されなくとも、骨の強さは更年期に入る前よりも弱くなってしまいます。また骨の強さ同様に筋の質の低下などが起こるといわれておりそれに伴い筋力の低下がみられることがあります。症状が出始めるよりも前から対策をしておくことをおすすめします。
まとめ
女性の活躍推進により働く女性がより増えており、その中で役職につく女性も少しずつ増えていく反面、更年期症状によって生産性の低下や離職につながりやすい実情もあります。もちろん女性の健康課題は更年期だけではありませんが、女性特有の症状に悩む人が働きやすいように啓発活動や休暇制度の整備に乗り出す会社が少しずつ増えてきています。ヘルスリテラシー向上のための取り組み以外にも、症状軽減に対してストレッチが有効との研究データも出ています。
弊社でも従業員に向けて更年期など女性のヘルスリテラシー向上のためのセミナーの開催や、ストレッチやエクササイズの提案なども行っています。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
〈記事執筆〉
熱海 優季
【保有資格・修了】
理学療法士免許
アメリカ理学療法士協会認定「骨盤底の理学療法Level1」修了
【執筆】
『女神筋(骨盤底筋)が目覚める! 「女性のヨガと子宮の整体法で女性の不調と悩みを解決! 」』
『女性の不調と悩みを解決!! 女性のヨガと子宮の整体法』
【取材掲載】
- ◉もっと健康に、もっと美しく 日経ヘルス2015年1月号
- ◉セラピスト 2014年12月号 DEC. vol.76 子宮の機能を高める
「整体」+「セルフケア」 骨盤底筋群と骨盤の総合ケアで婦人科系トラブルを一掃! 監修 - ◉セラピスト2013年12月号 DEC vol.70 「セラピー」+「国家資格」で夢・想いを叶える
- ◉アイセイ薬局2015年冬号 ヨガで快尿
これまで延べ20,000人のリハビリや運動指導に携わり、ウィメンズヘルスの分野では専門家や一般向けの講演件数100件以上、上場企業などでのセミナーも開催。
新人時代に出会った患者様の『生理が始まってから1度も自分の身体が健康だと思えた日がない』という言葉に衝撃を受け、ウィメンズヘルスの領域を専門に学び始める。現在は産前産後の女性や生理関連の不調、更年期など女性特有のライフステージの変化に伴う身体の不調に対して運動指導や施術などを行っている。
また女性向けの健康経営にも携わり、コンテンツの作成や、ヘルスリテラシー向上のために企業で働く従業員向けのウェビナーやイベントなども実施。自身も3児の母。
弊社では、国家資格を保有している理学療法士や作業療法士が運動指導やヘルスリテラシー向上のための研修、オフィスに出張してストレッチや施術を行うサービスなどを行っております。数名の企業から大企業まで、業種問わず、良い評価をいただいております。
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