2025.12.25
健康 セルフケア【運動で血圧が下がるって本当?】「高血圧」に効果的な運動を理学療法士が解説
「健康診断で初めて『血圧が高め』と指摘された」
「自覚症状がないから大丈夫だろう」
働き盛りのオフィスワーカーから、このような声はよく聞かれます。
欧米化した食生活、ストレス社会、運動不足等により、気付かないうちに血圧が上昇していることは多々あります。
令和5年国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)によると、20歳以上の高血圧症有病者の割合は、47.6%と言われています。
つまり、日本人の2人に1人は高血圧ということになります。
また、高血圧の対応策として、運動療法が挙げられます。
運動で血圧が下がるという事実は広く知られていますが、「なぜ効くのか」そして多忙なオフィスワーカーにとって、「どんな運動が最適なのか」を正しく理解できている方は多くありません。
本記事では、理学療法士の立場から、
- ◉運動が高血圧にもたらす具体的なメリット
- ◉多忙なビジネスパーソンでも手軽に始められる、高血圧を改善するための運動の種類
をご紹介致します。
目次
①オフィスワーカーと高血圧の関わりについて
血圧は様々な因子により決定される
血圧は、単純な要因で決まることはありません。

- ◉心臓から送り出される血液の量
- ◉血管の太さ、硬さ
- ◉血液の粘度
など、様々な因子の複雑な結果として決まります。
オフィスワーカーはなぜ高血圧になるのか?
では、高血圧はなぜ起こるのかを深堀りしていきます。
一般的な因子の中でも、特に「オフィスワーカーが高血圧になりやすい因子」を取り上げていきます。
過度な塩分摂取・飲酒等の食生活
オフィスワーカーの方々は、日々飲み会や会食等で、外食をする機会が多いと思います。
外食の摂取が続き、塩分の摂取量が多くなると、血液等の体液の濃度を一定に保つために、体内の水分量が多くなります。結果的に、体内の循環血液量が多くなり、血圧が高くなります。

また、飲酒についてはどうでしょうか?
意外なことに、飲酒直後は一時的に血圧が下がることもありますが、その後は反動で血圧が上昇すると言われています。さらにアルコールは、交感神経を刺激し、心拍数増加と血管収縮を引き起こすため、結果的に慢性的な血圧の上昇を招きます。

このように、外食による「塩分摂取・飲酒」は高血圧に結びつきます。
仕事によるストレス
仕事により、ストレス、不安、緊張状態が続くと、交感神経が常に優位となります。交感神経優位な状態が続くことにより、心拍数増加と血管収縮が持続して、高血圧が状態のまま保たれてしまいます。

デスクワークによる循環の低下
長時間に及ぶデスクワークの結果、循環が悪くなり、塩分・水分を溜め込みやすくなることにより血圧の上昇が起こります。また、血管・自律神経・ホルモンの働きが悪くなることで、血圧の上昇が起こります。

②運動で血圧が下がる理由
ここまでで、高血圧のメカニズムや原因をご理解頂けたと思います。
ここからは、「高血圧」を「運動」に特化した視点で関連性を解説していきます。
「高血圧」に「運動」が良いと言うことはなんとなくは分かっていても、そのメカニズムや理論までは知らない方が多いかと思います。
効果的な理由はいくつかありますので順に解説します。
「一酸化窒素の産生」による血圧低下
運動をすることにより、筋肉の血流が増え、その結果血管に「ずり応力(滑り合う力)」が加わります。
この「ずり応力」の刺激により、血管内皮細胞(血管の一番内側)から一酸化窒素(NO)が産生されると言われております。1)
一酸化窒素(NO)は、
「血管平滑筋(血圧・血流の調節に関わる筋)を緩めることにより、血管が拡張する」
という役割を持っています。
つまり、血管が広がるので、血液がより流れやすくなり、高い血圧を必要としない状態となるのです。

「自律神経」による血圧低下
運動をすると、身体は戦闘モードになり、「交感神経(アクセル)が優位」な状態になります。
「交感神経が優位ってことは、血圧は上がるんじゃないの?」
こう思われた方は大正解です。
交感神経が優位になることで、血圧・心拍数ともに上昇することは事実です。
しかし、大事なのは「運動終了後」です。

運動後には、筋肉が休憩モードに入り、「副交感神経(ブレーキ)が優位」な状態へとシフトしていきます。
この、運動による「交感神経(アクセル)」と「副交感神経(ブレーキ)」の切り返しが非常に重要で、自律神経を介して血圧が下がりやすい状態へと導きます。
「体重が減量した結果」による血圧低下
体重が重いと、その分体内を循環する血液量が必要となり、心拍出量も多くなります。
運動の結果、体重が減少した場合、心拍出量も減少します。
当たり前ではありますが、その結果、血圧も下がっていきます。

「脳への物理的衝撃」による血圧低下
国立障害者リハビリテーションセンター、東京大学らの共同研究グループ(2023)によると、適度な運動が高血圧改善をもたらすメカニズムが存在するということがわかりました。2)
軽いジョギング程度の運動中、足の着地時に脳に伝わる適度な物理的衝撃により、脳内の組織液(間質液)が動きます。
その結果、脳内の細胞に刺激が加わり、血圧を上げるタンパク質の発現量が低下し、血圧低下が生じることがわかっています。

「運動の衝撃が脳に伝わり、血圧低下につながる」ということも、最近の研究で明らかになってきています。
③理学療法士が教える!効果的な運動メニュー
最後に、オフィスワーカーが実践できる最適な運動についてご紹介します。
※注意※
すでに高血圧の方は、運動開始の許可や適切な強度について、事前に主治医に確認を取りましょう。
1駅分は歩いて「有酸素運動」
有酸素運動が、血圧を有意に低下させることは、数々の研究においてもわかっています。3)
オフィスワーカーの方々に実践していただきたい運動として、「1駅分歩く有酸素運動」がおすすめです。

【実践方法】
「朝の通勤前の1駅」「次の商談前の1駅」など、1日20-30分の時間を目標にウォーキングを取り入れましょう。
時間の限られる多忙なオフィスワーカーの方に、非常におすすめです。
デスクワークの合間に「かかと上げ運動」
デスクワークの時間が長い事により、重力で血液が下半身に溜まってしまいます。
この血液の滞りは、心臓への負担となり、血圧の上昇につながります。
そこで有効なのが、ふくらはぎの筋肉を動員する「筋ポンプ作用」です。
かかと上げで使うふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、この運動で下肢の静脈の血流を心臓に戻す作用が働き、血圧の安定につながります。

【実践方法】
椅子に座ったまま、かかとをゆっくり上げ下げします。
また、立って行う場合は、机などに軽く手を添えます。
反動を使わずに20-30回程度繰り返しましょう。
⑤まとめ
無症状なことが多い「高血圧」ですが、放置することは、従業員の欠勤や離職リスクといった、「企業の生産性」や「健康経営」の実現を妨げる大きな要因となります。
日々の運動習慣が重要だと分かっていても、個人の努力だけではなかなか習慣化できません。
弊社では、理学療法士などの専門家が出張し、社員様の身体状況をチェックした上で、安全かつ効果的な運動習慣をオフィスに定着させるためのサービス(ヘルスリテラシーセミナー、グループセッションなど)を提供しております。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
〈参考文献〉
〈記事執筆〉

吉田 亮太郎
【保有資格・修了】
理学療法士
NSCA-CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
外来整形外科にて数多くのリハビリや運動指導に携わる。
またトレーナーとして、一般層から高校野球選手まで、幅広い層へのトレーニングやコンディショニングの提供を行なっている。
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