2025.3.1
健康経営 女性の身体の悩み【理学療法士が解説】「生理関連のからだの不調で働く女性の約8割がパフォーマンスの低下?」その対策とは?
生理は初潮を迎えてから閉経まで約38年間あると言われています。閉経の平均年齢が50歳と言われているため、働く年代の女性の多くは毎月生理があります。生理に伴う症状は個人差がありますが、生理周期によって何かしらの不調を抱えている人は約8割及ぶとも言われています。この記事では生理関連の不調によって起こる経済的な損失から対策まで、理学療法士の視点で解説していきます。
目次
生理関連の不調による経済的な損失は?
令和6年2月の経済産業省の調査によると、生理関連に伴う経済損失は年間で約6000億円と言われています。労働力人口も女性の割合が年々増えていること(図表1-2-1)や、ますます女性の活躍が期待される社会情勢の中で、女性特有の健康課題に対する取り組みは非常に重要なものであることがわかります。
女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について
どのようにして経済損失が引き起こされているのかということに着目すると、生理関連の不調は、生理中の不調と生理前の不調とで分類されます。生理中の症状や、生理前の不調により仕事を休まざるを得ない場合や、出勤することができていたとしても症状により仕事に集中することができない、または普段しないようなミスなどが目立つというように仕事に何かしらの影響を及ぼすことがみられます。これはプレゼンティーイズムといって、健康問題が原因で業務のパフォーマンスが低下する状態を指し、業務効率や生産性の低下がみられるものをいいます。生理関連の不調もまさにこれに当てはまります。
資料出所:総務省「労働力調査」
「労働力人口の男女別構成比」は厚生労働省雇用環境・均等局作成
生理のある女性はどんなことに悩んでいる?
生理のある女性は具体的にはどのようなことに悩んでいるのかというアンケートはさまざまな企業が行っていますが、そのアンケートのほとんどが約7~8割の女性が生理に関して何かしら不調を感じているという結果が多くみられます。
生理中の症状
- ◉日常生活に困るくらいの生理痛がある(仕事に行けない)
- ◉経血の量が多く、仕事に集中できない
- ◉頭痛があり仕事に支障がでる
- ◉吐き気がある
- ◉下痢になりやすい
- ◉めまいや倦怠感がある
- ◉気分の落ち込みがあったりイライラしてしまう
生理前の症状
- ◉生理不順によりいつ生理がくるかわからない
- ◉イライラや気分の落ち込みが起こる
- ◉身体がむくみやすい
- ◉倦怠感がある
- ◉頭痛が起こりやすい
月経困難症
生理開始の直前から開始時に、下腹部痛や腰痛(いわゆる生理痛)があります。そのほかにも、吐き気・嘔吐、頭痛、疲労感、食欲低下、下痢、イライラ、抑うつなどさまざまな症状が現れてきます。
PMS(月経前症候群)/PMDD(月経前気分不快障害)
PMSという言葉も近年よく耳にするようになってきていると思います。PMSは月経前症候群といって生理周期に伴って生理の前の期間に月経困難症等同じような不調が現れる場合を言います。PMDDはより精神的な症状が強い場合であり、日常生活に大きな支障をきたしている状態であることが多いとされています。
生理のメカニズム
生理周期は25~38日が平均的な周期と言われています。このグラフのようにエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンの分泌バランスによって左右されています。一般的に生理期間は5~7日程度とされており、生理期間は身体から出血している時期でもあるためこの期間は過度な運動は控えた方がよいとされています。生理が終わると排卵日までは比較的安定して過ごせることが多く、アクティブ期とも言われています。生理に関連して何かしら不調を抱えている女性は月の半分以上に不調を感じていることになります。
これでは仕事で自分自身のパフォーマンスを最大限に発揮できないような状況となってしまいます。一方で生理痛も全くないという人や生理前の不調などもあまり感じずに過ごしている人もいます。
同じ女性でも症状は大きく異なりますし、また症状がある場合でも、個人差があり理解し合えない状況を引き起こす場合もあります。
生理痛やPMSに対する企業/個人の対策
企業側がまず取り組むべきことは、生理に伴う症状はどんなものがあり、どのようなことに困っているのか、また生理の簡単なメカニズムなど、従業員への研修を行うことであり、そこからお互いへの理解を深めていく必要があります。また休暇制度などの取り組みも重要な課題です。企業の取り組みに関して事例を交えてご紹介します。
【株式会社サイバーエージェント】
女性が取得する休暇をすべて「エフ休」と名称を変更しています。生理休暇、そのほかの女性特有の体調不良や治療・通院のための休暇、そして普通の有給休暇も含めて、女性社員が申請する休暇については休暇の種類を問わずすべてを対象としています。
【中部電力パワーグリッド松本営業所】
全員研修で職場に共通の気づきを与え、どれだけ女性社員の健康やQOL、仕事の生産性に影響を与えているかを考える機会を作ることを実施しています。男性管理者が多い中で、女性特有の症状への理解を深め、男性にも知識を持ってもらい、女性だけの取り組みにしないことが重要だとして取り組みを行っています。
【エムティーアイ】
気軽に受診できる環境づくりをつくりたいという想いから「オンライン診療」を活用しています。福利厚生プログラムの目的として婦人科受診を促すことで従業員の健康管理に役立ててほしいという願いがあります。働きながら通院するためには休日または仕事を休まないと受診できない場合があるため、オンライン診療を活用することで業務の合間などにも気軽に受診できる状況を整えています。また低用量ピルと診療代は全額会社負担となります。
【個人の対策】
女性自身が生理痛は仕方がないものという認識をもっている割合が多く、我慢しながら生理周期を過ごしている人がいます。まずこの認識を変えていくことは今後女性が活躍する場が増えていくにあたりとても重要な課題となります。その中でも個人でできる対策にどのようなものがあるかをお伝えします。
[生理期間中]
[PMSなどの時期]
このように個人でできる取り組みもたくさんあります。日常生活の中に組み込みやすいものなどを取り入れながら身体のケアも実施できるとよいと思います。
まとめ
今の社会情勢の中で女性活躍を進めていく上で女性の健康課題に対する取り組みは重要度の高いものであり社会全体で変化していく意識が必要です。そのためには、企業全体で女性の健康課題に対するヘルスリテラシーを高めていくことも重要であり、制度を整えていくことが必須となります。当事者である女性も自分の体に目を向け我慢する社会ではなく解決に向かうように取り組む意識をしていくことも大切なことです。弊社でも企業様向けにヘルスリテラシーに関するセミナーやイベント、グループセッションなどの提案も行っていますのでぜひお気軽にお問い合わせください。
〈記事執筆〉

熱海 優季
【保有資格・修了】
理学療法士免許
アメリカ理学療法士協会認定「骨盤底の理学療法Level1」修了
【執筆】
『女神筋(骨盤底筋)が目覚める! 「女性のヨガと子宮の整体法で女性の不調と悩みを解決! 」』
『女性の不調と悩みを解決!! 女性のヨガと子宮の整体法』
【取材掲載】
- ◉もっと健康に、もっと美しく 日経ヘルス2015年1月号
- ◉セラピスト 2014年12月号 DEC. vol.76 子宮の機能を高める
「整体」+「セルフケア」 骨盤底筋群と骨盤の総合ケアで婦人科系トラブルを一掃! 監修 - ◉セラピスト2013年12月号 DEC vol.70 「セラピー」+「国家資格」で夢・想いを叶える
- ◉アイセイ薬局2015年冬号 ヨガで快尿
これまで延べ20,000人のリハビリや運動指導に携わり、ウィメンズヘルスの分野では専門家や一般向けの講演件数100件以上、上場企業などでのセミナーも開催。
新人時代に出会った患者様の『生理が始まってから1度も自分の身体が健康だと思えた日がない』という言葉に衝撃を受け、ウィメンズヘルスの領域を専門に学び始める。現在は産前産後の女性や生理関連の不調、更年期など女性特有のライフステージの変化に伴う身体の不調に対して運動指導や施術などを行っている。
また女性向けの健康経営にも携わり、コンテンツの作成や、ヘルスリテラシー向上のために企業で働く従業員向けのウェビナーやイベントなども実施。自身も3児の母。
弊社では、国家資格を保有している理学療法士や作業療法士が運動指導やヘルスリテラシー向上のための研修、オフィスに出張してストレッチや施術を行うサービスなどを行っております。数名の企業から大企業まで、業種問わず、良い評価をいただいております。
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