2025.3.1

健康経営

従業員のメンタルヘルス不調改善には運動が効果的?【科学的根拠と運動方法紹介】

健康経営

近年、従業員における「メンタルヘルス不調」がトピックに挙げられるようになってきました。

2024年にパーソル総合研究所が実施した「若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査」によると、過去3年以内に治療なしでは日常生活が困難なほどのメンタルヘルス不調を経験した正規雇用者は、14.6%いると報告されております。

メンタルヘルス不調経験者の退職率
パーソル総合研究所(2024),若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査より引用

「メンタルヘルス不調」は、精神疾患(うつ病・適応障害等)として診断がついているわけではありません。

「うつ病」「適応障害」といった、精神疾患の診断がつかずとも、「ストレス」「悩み」「不安」によって気分が落ち込んでいる状態であれば、「メンタルヘルス不調」に該当します。

その「メンタルヘルス不調」の改善方法は、様々なメディアでも取り上げられることが多いです。
中でも「運動をしましょう」というフレーズは、よく聞くかもしれません。

本記事では、「運動」が本当に有効なのかを科学的根拠と運動方法を交えながら解説していきます。

メンタルヘルス不調とは

メンタルヘルスの悪化した状態を、「メンタルヘルス不調」といいます。

「メンタルヘルス不調」になると、生産性が失われ、効率的に働くことが出来なくなってしまいます。「メンタルヘルス不調」が更に進行することにより、身体、行動、感情、人間関係等にまでも悪影響を及ぼしていきます。

また、「メンタルヘルス不調」は、精神疾患(うつ病・適応障害等)として診断がついているわけではありません。
「うつ病」「適応障害」といった、精神疾患の診断名がつかないため、より発見が難しいという側面もあります。

メンタルヘルス不調の改善には「運動」が有効

「メンタルヘルス不調」の改善には「運動」が有効なのでしょうか?

「身体活動」と「うつ症状・うつ発症」との関連を検討したメタアナリシス(Pearce et al,JAMA Psychiatry,2022 ※1)によると、身体活動量の推奨量(週2.5時間の速歩き相当)を満たしている人は、「うつ症状・うつ病」を発症する可能性が25%低いことが示されています。

推奨量の半分だけで満たしていても、18%低いことがわかりました。

※1 武田典子(2024)「ストレス&ヘルスケア No.253 身体活動・運動とメンタルヘルス」公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンター ストレス科学研究所,p3

このことより、運動の実施はメンタルヘルス不調を予防することにつながるということがわかります。

運動がメンタルヘルスに及ぼす影響は様々な仮説がある

では、実際にどういったメカニズムで、運動がメンタルヘルス不調を改善していくのか、メカニズムを深堀りしてみます。

永松(2013)※2による抑うつ改善に及ぼす運動の効果を示した論文によると、「生理学的仮説」や「心理学的仮説」など様々な仮説があることが提示されております。

※2 永松俊哉(2013),抑うつ改善に及ぼす運動の効果,The Japanese Society of General Hospital Psychiatry,Vol. 25, No.3

それぞれの仮説を紹介します。

モノアミン仮説(monoamine hypothesis)

1960年代に行われた抗うつ薬の研究において、抗うつ薬を与えられた動物のシナプス(神経細胞の接合部)では、ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニンという神経伝達物質(モノアミン)が増加していることがわかりました。

そのため、うつ病になる要因として、神経伝達物質の不足が一因にあると考えられています。※3
※3 瀬藤ら(2018),メンタルヘルスに対する 運動の介入効果に関する近年の知見,甲南女子大学研究紀要 第12 号 看護学・リハビリテーション学編

神経伝達物質はそれぞれ、様々な役割を担っております。

神経伝達物質の役割について

ノルアドレナリン
緊張・不安・集中をもたらす。過剰になると攻撃的に。

ドーパミン
喜び・快楽・意欲をもたらす。過剰になると過食や各種依存に。

セロトニン
ノルアドレナリン・ドーパミンの抑制をする。脳の興奮を抑えて精神を安定させる。

それぞれの神経伝達物質のバランスが崩れると「メンタルヘルス不調」になるリスクが高くなります。

運動によりセロトニンが分泌される

Kondoら(2015)※4によると、脳内のセロトニンレベル運動後に上昇すると述べられております。

※4 Kondo M, Nakayama Y, Ishida Y, et al.: The 5-HT 3 receptor is essential for exercise-induced hippocampal neurogenesis and antidepressant effects. Molecular Psychiatry 20: 1428-1437. 2015
上記により、「運動」により「セロトニン」の分泌を促し、「ノルアドレナリン」「ドーパミン」の抑制をすることで、神経伝達物質のバランスを保つという仮説が成立します。

前頭前野​​への血流増加仮説

前頭前野は

前頭前野は
◉感情のコントロール
◉記憶
◉集中

等に関与しております。
「人間が人間らしく」あるために必要な部分であるとも言われております。

Byun Kら(2014)※5は、10分間の軽度な運動において、「前頭前野」への血流増加・皮質の活性が見られたと述べております。

したがって、軽度な運動は「前頭前野」への血流量を増加させ、「メンタルヘルス不調」の改善につながるとも言えるでしょう。

※5 Byun K, Hyodo K, Suwabe K, et al.: Positive effect ofacute mild exercise on executive function via arousalrelated prefrontal activations: An fNIRS study. NeuroImage 98(2014)336-345. 2017.

心理・社会的要因による仮説

橋本・堀田ら(2009)※6では、運動やスポーツ活動がメンタルヘルスに寄与するだけでなく、「心理的」「社会的」にも影響を及ぼすことが示されています。

心理的要因

運動により、「自己効力感」「自尊心」「達成感」が生まれ、特に自己効力感の向上が、困難な状況に対処する能力を強化すると言われています。

結果的にメンタルヘルス不調を予防しやすい状態を作り出すこととなります。

社会的要因

特にグループでの運動等により、「チームワーク」「他者との交流」という環境が作られ、他者との交流が増え、社会的つながりが強化されることになります。

これにより、孤独感やストレスが軽減することで、メンタルヘルス不調を予防できると言われています。

※6 橋本公雄・堀田亮(2009),「運動・スポーツ活動におけるメンタルヘルス効果の仮説モデル:心理・社会的要因を媒介変数として」,健康科学 Vol.31

これまで、運動によるメンタルヘルスへの影響について、様々な仮説を提示してきました。
メカニズム等については、未だ明確な結論付けはされていないのが現状です。

では、具体的な運動方法は何をしたら良いのか、次のページで解説します。

具体的な運動の選び方について

ここまでで、メンタルヘルス不調の改善には、「運動」「身体活動」が有効である科学的根拠を示して来ました。

では、具体的にどのような運動を選択すればよいのかを以下で解説します。

Michaelら(2024)※7は、うつ病の治療に対する最適な「運動方法」及び「運動量」を特定することを目的として、無作為化試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析を行いました。

その結果、
運動身体活動はどんなものであっても、うつ病を改善するのに有用である。
ウォーキングヨガなど、低・中度の強度の運動であっても効果を期待できる
◉運動の
強度を高めると、さらに効果を高められる
ということがわかりました。

※7 橋本款(2024),うつ病に対する運動療法の有効性,公益財団法人 東京都医学総合研究所HPより引用:左記の引用元:Effect of exercise for depression: systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials, Michael Noetel et al. BMJ 2024;384:e075847

つまり、

運動の強度は高いほうが良いが、対象者によって運動の種類を選択し低強度の運動でも効果がある」ということがわかります。

上記の論文中で取り上げられていた代表的な運動をご紹介します。

有酸素運動

有酸素運動は、

具体的な有酸素方法の例としては、
ウォーキング
ジョギング
ランニング
エアロバイク
エアロビクス
などがあげられます。

また、有酸素運動は「20分以上行わないと意味がない」という言い伝えがありますが、それはNGな考え方です。

有酸素運動開始直後から脂肪の燃焼は始まっており、それが時間の経過とともにおよそ20分を超えたところで、糖質よりも脂肪の燃焼が上回るというのが正しい解釈です。

なので、軽い短時間の運動からでも効果はありますので、まずは自分にあった強度で初めてみましょう。

レジスタンストレーニング

レジスタンストレーニングというと難しく聞こえますが、「筋力トレーニング」のことを指します。

レジスタンス(抵抗)を筋肉に対してかけていき、筋力・筋肉量などの増大を図るトレーニングです。

具体的なレジスタンストレーニングの例としては、
マシントレーニング(チェストプレス、レッグエクステンションetc)
フリーウエイトトレーニング(ベンチプレス、スクワット、デッドリフト)
自重トレーニング(腕立て伏せ、シットアップetc)
などがあげられます。

前述の論文では、より高強度のほうがメンタルヘルス不調に対してより効果があると言われておりましたが、自分にあった強度で、まずは低負荷な運動から始めてみることをおすすめします。

ストレッチ

甲斐ら(2020)※8によると、日本人女性の更年期症状と抑うつに対して、 3週間毎日10分間のストレッチを行ったところ、抑うつだった参加者の41.7%は、実施後に正常な状態に回復したことが報告されております。

※8 甲斐ら(2020),中年女性の更年期症状および抑うつ症状に対する ストレッチの効果:ランダム化比較試験 ―Menopause に掲載された英語論文の日本語による二次出版―,体力研究 BULLETIN OF THE PHYSICAL FITNESS RESEARCH INSTITUTE  No.118,p18-26

運動というとハードルが上がってしまうと思いますが、ストレッチのような軽度な運動でも、メンタルヘルス不調改善への効果は高いと言えます。

まとめ

「メンタルヘルス不調」の改善には「運動」が効果的な根拠とその運動方法を説明させて頂きました。

従業員の「メンタルヘルス不調」は生産性の低下に直結するため、企業として「予防」と「ケア」に取り組むことがとても重要で、結果的に企業の業績向上・持続的成長へと繋がります。

弊社では、企業内に出張し、社員様の身体状況をチェックした上でストレッチを提供し、身体的不調を改善するサービスを提供させて頂いております。

まずは、自社の職場環境のチェックやニーズのチェックも含め、無料相談を受け付けておりますので、お気軽にお問合せくださいませ。

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