【理学療法士が解説】女性のライフステージと身体の変化に応じた運動やケア

女性の活躍を進めるためには、女性特有のライフステージの変化について知っておくことは重要です。人事担当者や経営者であればライフステージの変化に伴いどのような身体の変化が起こるのか知っておくことで、企業としての対策なども考えることができます。まずはライフステージの変化を知ることから、解説していきます。

女性のライフステージの変化について

年齢とともに女性ホルモンの分泌量によって体が大きく変化していきます。女性ホルモンは大きく分けて２種類あり、エストロゲンという女性ホルモンとプロゲステロンという女性ホルモンがあります。これは月経周期をコントロールホルモンとしても働いています。

エストロゲンは年齢によって分泌量が変化し、女性らしい体つきや皮膚、骨、筋肉、脳、自律神経などの働きにも大きな影響を及ぼしています。

成長とともに分泌量が増え思春期になるとエストロゲンの分泌量が増え女性らしい丸みのある体つきになり14歳前後で生理が始まります。

20代では性機能が成熟し、卵巣機能も高まり妊娠・出産の準備が整います。30代ではエストロゲンの分泌量がピークに達する時期です。40代になるとエストロゲンの分泌量が低下し始め、その影響でさまざまな体調の変化が起こり更年期症状に移行していきます。60歳ごろにはほぼ分泌がなくなります。このように生涯を通してホルモンバランスによって身体の変化があり、それにともなった身体的な不調などが起こるのです。

第３回 女性の健康づくり推進懇談会議より引用

各ステージの運動とケアについて

思春期（10代）— 成長期の身体を支える運動とケア

• ◉ホルモンバランスの変化と姿勢の影響
• ◉運動不足による筋力低下と猫背の予防
• ◉過度な運動による無月経や骨盤周囲への過負荷
• ◉月経周期に合わせた運動の工夫

この時期は、女性らしい体が作られる時期であり、運動不足による筋力低下や猫背以外にも、運動の過負荷による無月経や月経不順なども問題となるケースもあります。
月経周期に合わせた運動の工夫はとても重要であり、女性の体作りのベースともなる時期です。

［起こりやすいトラブル］
◉月経異常(月経が来ない、不順、月経痛)
◉PMS(月経前症候群)
◉セックスに伴う性感染症や避妊・妊娠
◉生活習慣(過度なダイエット、若年者の喫煙)
◉摂食障害

妊娠・出産期（20代～40代）— 妊娠中・産後の身体を守る運動とケア

• ◉月経異常/PMS
• ◉妊娠中のホルモン変化と骨盤の不安定性
• ◉妊娠中のトラブルを軽減するエクササイズ
• ◉産後の骨盤底筋トレーニングとリハビリ

この時期は成熟期とも言われ、女性ホルモンの分泌が安定し、妊娠・出産に適した時期とされています。しかし、すべての女性が同じように妊娠しやすいわけではなく、個々の体質や健康状態によって異なります。この時期は生殖に関する選択肢が広がる時期であり、妊娠出産を迎えた場合はライフステージの変化や身体的な変化も伴います。その場合は、妊娠中の腰痛や肩こり、マイナートラブルに関するエクササイズや、骨盤周囲の筋肉のトレーニングなどが必要である場合があります。
また更年期に向けて妊娠出産の有無にかかわらず体の変化が起こり始める時期でもあります。

［起こりやすいトラブル］
◉不妊
◉婦人科の病気(子宮内膜症、子宮筋腫など)
◉女性特有のガン(子宮頸がん、子宮体がん)
◉若い女性に多い病気(膠原病、甲状腺異常)

更年期（40代～50代）— ホルモン変化に対応する運動とケア

• ◉エストロゲン減少による筋力・骨密度低下
• ◉更年期症状（ホットフラッシュ・関節痛）を軽減する運動
• ◉自律神経を整えるヨガ・ストレッチ

更年期の時期は閉経から前後5年ずつの合計10年を指しますが、更年期症状の有無は個人差があります。

全く症状がなくこの時期を過ごせる場合もありますし、更年期障害として日常生活に支障が出るケースも多くあります。女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減少したことが主な原因と考えられていますが、社会や家庭などの背景などおかれている状況により更年期症状の出方が異なることが言われています。
さまざまなストレスがある場合や、介護などで物理的に睡眠時間の確保が難しいことや子育てなどによっての負担などが大きい場合にも症状が悪化することもあります。
適度な運動や自律神経を整える運動(ヨガやピラティスなど)やストレッチなどが有効とされています。

［起こりやすいトラブル］
◉更年期障害
◉うつ
◉女性特有のガン(乳がん、卵巣がん、子宮体がん)
◉生活習慣病(高血圧、動脈硬化、肥満、糖尿病)
◉性交障害
◉腰痛や肩こりがひどくなる

シニア期（60代～）— 健康寿命を延ばす運動とケア

• ◉筋力低下と転倒リスクの関係
• ◉骨粗しょう症予防のための運動
• ◉関節の可動域を維持するストレッチ

更年期の時期が過ぎるとシニア期と言われる時期に突入しますが、若年期の運動量やもともとの筋肉量などのベースに個人差があるため、若年期にあまり運動などを積極的に行わなかった場合は筋力量の低下が目立ち関節の痛みにつながってしまう場合や、女性ホルモンが減少することによって筋肉の線維の質が変わり、それにより筋力が発揮しづらい状況になります。これらのことにより転倒のリスクが高まることもあります。
体に合わせた運動やストレッチなどを取り入れ体の維持をすることが重要になります。

［起こりやすいトラブル］
◉骨粗鬆症
◉アルツハイマー
◉尿もれ
◉臓器脱

ライフステージを通じて大切なセルフケアについて

どの年代でも重要な「姿勢」と「呼吸」

［姿勢］
身体の慢性的な痛みの多くは体の姿勢や動作が原因となっています。姿勢には何パターンか特徴があり、どんな姿勢になりやすいかは専門家にみてもらうことで簡単に判別できます。よい姿勢を保つには、硬くなっている筋肉や関節の可動性をしっかり保てていることや、身体を支える筋が適切に働くことによって負担の少ない良い姿勢をキープすることができます。例えば猫背では、首や腰にも負担がかかりやすく痛みが生じるケースは多くあります。女性の場合はバストの位置が下がる、お尻がたれてみえるなど外見的にも影響を及ぼします。反対に反り腰の方は一見姿勢はよさそうに見えることもありますが、下っ腹が出て見えたり、腰痛などの要因の一つになります。猫背や反り腰ともに呼吸するための筋肉や関節の動きが出にくいなどの影響を受け呼吸が浅くなりやすくなります。

［呼吸］
呼吸は、全身への循環を促す作用があったり、呼吸が整っていることによって胸郭や横隔膜といった身体のインナーマッスルの活動を高めます。呼吸が深くできることで、自律神経へのよい影響も与えることができるため呼吸機能を高めることはとても重要です。

まとめ

ライフステージの変化によって、身体も大きく異なり悩みもさまざまになってきます。女性の活躍推進を行うためには、女性特有のライフステージの変化を知りそれに伴う身体の変化を学ぶことはとても重要なことになります。知ることで初めて適切な対策を立てることができます。まずは知ることから始めましょう。ライフステージの変化に伴うエクササイズやストレッチ方法、ヘルスリテラシー向上のためのウェビナー開催など、弊社ではご要望にあった形でご紹介することが可能です。これまで多くの企業様にsessionやウェビナー開催、出張施術などでお喜びいただいております。
まずはお気軽にお問い合わせください。

〈記事執筆〉

熱海 優季

【保有資格・修了】
理学療法士免許
アメリカ理学療法士協会認定「骨盤底の理学療法Level１」修了

【執筆】
『女神筋(骨盤底筋)が目覚める! 「女性のヨガと子宮の整体法で女性の不調と悩みを解決! 」』
『女性の不調と悩みを解決!!　女性のヨガと子宮の整体法』

【取材掲載】

• ◉もっと健康に、もっと美しく 日経ヘルス2015年1月号
• ◉セラピスト 2014年12月号 DEC. vol.76 子宮の機能を高める
  「整体」+「セルフケア」 骨盤底筋群と骨盤の総合ケアで婦人科系トラブルを一掃！ 監修
• ◉セラピスト2013年12月号 DEC vol.70 「セラピー」＋「国家資格」で夢・想いを叶える
• ◉アイセイ薬局2015年冬号 ヨガで快尿

これまで延べ20,000人のリハビリや運動指導に携わり、ウィメンズヘルスの分野では専門家や一般向けの講演件数100件以上、上場企業などでのセミナーも開催。

新人時代に出会った患者様の『生理が始まってから1度も自分の身体が健康だと思えた日がない』という言葉に衝撃を受け、ウィメンズヘルスの領域を専門に学び始める。現在は産前産後の女性や生理関連の不調、更年期など女性特有のライフステージの変化に伴う身体の不調に対して運動指導や施術などを行っている。

また女性向けの健康経営にも携わり、コンテンツの作成や、ヘルスリテラシー向上のために企業で働く従業員向けのウェビナーやイベントなども実施。自身も3児の母。

弊社では、国家資格を保有している理学療法士や作業療法士が運動指導やヘルスリテラシー向上のための研修、オフィスに出張してストレッチや施術を行うサービスなどを行っております。数名の企業から大企業まで、業種問わず、良い評価をいただいております。