2025.12.25
健康経営 女性活躍推進 女性の身体の悩み【理学療法士が解説】忙しい女性の毎日を整える 通勤&デスクワークのスキマ健康術
仕事をしながら家事・育児・介護など、未だに女性の役割が多い現実があります。 子育て世代や介護に時間を割かなければならない女性にとっては、 自分の都合で好きな時間を自由に過ごすことは簡単ではありません。もちろんストレッチやエクササイズなどの運動時間をしっかり確保できれば理想ですが、まずはスキマ時間を活用して簡単な動きやストレッチを取り入れることから始めてみましょう。それだけでも、身体の疲労感が異なったり、運動への意識やヘルスケアへのモチベーションが少しずつ変わっていきます。
今回は理学療法士の視点から、通勤時間や家事の合間にできるエクササイズやストレッチをご紹介します。
目次
通勤や家事の時間を“ながらエクササイズ”に変える立ち方・歩き方
【正しい立ち姿勢のポイント】
まず正しい姿勢を知る前に大きくわけて3つの姿勢のタイプがあります。これはこの姿勢が悪いということではなく、姿勢の傾向や硬くなりやすい筋肉やクセについて示しています。
◉猫背と言われるSwayBack姿勢

◉全体的に背骨の弯曲が少ないFlatBack姿勢

◉反り腰のLoadosis

大きく分けてこれら3つのタイプに分類される姿勢ですが、自分自身の身体がどの姿勢を取りやすいのかはわかりにくいと思います。正確な診断は専門家に診てもらうのが一番ですが、現代では特に猫背傾向は非常に高い割合で確認されています。(2,400人のAI姿勢分析から見える現代日本の姿勢実態調査レポート | 株式会社Sapeetのプレスリリース)
こうしたデータからもわかるように、デスクワークや椅子に座ってスマホをみるなどが多い現代では背中が丸まりやすい姿勢を取りやすくこのような結果になっていると考えられます。
正しい姿勢がどのような姿勢であるかを次に解説していきます。

まず正しい(良い)姿勢とは、身体に余計な負担をかけずに立てる状態のことを言います。この状態を保つには、頭が骨盤の直上にあるということに加えて、体幹が同様に骨盤の上にのっていることが大切です。この姿勢を意識するだけでインナーマッスルの活動も自然に働きやすくなるので安定しやすい姿勢と言われています。反り腰や猫背の姿勢はこの状態が難しく、インナーマッスルが働きにくい状態ですので腰の筋肉に負担がかかったり、背中が硬くなったりします。インナーマッスルの中に横隔膜と言って呼吸するときに働く大きな筋肉があるので、インナーマッスルの活動が高まると横隔膜の働きも高まるため呼吸のしやすさなどに繋がり疲れにくさなどにも影響を及ぼしています。
日常生活の中に潜む悪習慣
- ◉料理や洗い物で片側に寄りかかる
キッチンカウンターに身体をあずけるような立ち方は猫背姿勢のSwayback姿勢や反り腰を強める
- ◉長時間の同じ姿勢(座りっぱなし、立ちっぱなし)
同一の筋肉に負担がかかる。
- ◉片脚に重心をかけて立つ
片側の腰や足に負担が集中し、立位での左右差が起こりやすい
- ◉足を組んで座る習慣
骨盤の左右バランスが崩れやすい。
- ◉デスクワークで背もたれにずっこけ座り
骨盤が後ろに倒れ、背中が丸まり腰や背中に負担がかかる
- ◉スマホ操作時の首が前に倒れる
首や肩につながる筋肉に負担がかかる
ご自身の生活の中で当てはまるものはありますか。日常生活を振り返って確認してみましょう。
【歩き方で変わる身体の変化】
身体に痛みなどの大きな不調はなくても、歩いているとももの前が張りやすくて疲れるなどの意見があったり、ふくらはぎが疲れやすく、いつも張っていて太く見えることが悩みなどの相談を受けることがよくあります。
こうした悩みの中で一つ共通した問題点として、歩幅の減少などがあげられます。例えばSwayback姿勢(猫背)など骨盤が後ろに傾く姿勢ですと、ももの裏側が硬くなり、その結果歩幅が狭くなってしまうことなどが原因にある場合があります。しっかり歩幅を広く保てるということはもも裏の筋肉の機能が保たれていることが言えます。
意識するポイントとしては、普段よりもほんの少しだけ遠くに足を振り出す意識をするだけで普段使っていない筋肉を使うことができるようになります。
自宅の駅から最寄り駅までは少し歩幅を広げて歩く意識を持つだけで日常生活に取り入れやすくなります。
【階段を使った、ながらエクササイズ】
階段はただの移動手段ではなく、ながらエクササイズに最適です。猫背などのSwayback姿勢ではももの裏側の筋肉やお尻の筋肉は普段から使いにくい環境になっているため、意識しないと普段からももの前側が使いやすくなり、張り感が出てしまったり疲れやすさに影響を及ぼします。そのためももの裏側の筋肉やお尻の筋肉を使う場面をより意識していくことがおすすめです。例えばお尻の筋肉である大殿筋は骨盤を安定させることができますし、ももの裏側の筋肉であるハムストリングスも股関節や膝関節の安定に繋がっていきます。
ただ階段を上がるだけでは、これらの筋肉は使いにくいので意識するコツが3つあります。階段を上るときは脚を持ち上げる意識をしやすいですが、実は踏み込んでいる脚の方が重要です。
- ①一段一段を「押し下げる」イメージ
足を前に振り上げるより地面を下に押し、踏み込むイメージを持ってのぼるとよりお尻やももの裏の筋肉であるハムストリングスの活動が得られやすくなります。
- ②かかとで押す
かかとから地面をぐっと押すイメージを持つとお尻の筋肉が使いやすくなります。
- ③ほんの少しだけ前傾姿勢になる
少しだけ前傾姿勢になるとお尻の筋肉がより使いやすくなります。階段をのぼるときに身体をまっすぐにしようと思うと、ももの裏側よりも前側の筋肉を使いやすくなるので、少し前傾することがおすすめです。
デスクワーク中の姿勢リセットに1分ストレッチ
【肩こり予防の胸筋ストレッチ】
厚生労働省が2022年に行った国民生活基礎調査によると、国民の4人に1人は「病気やけが等で自覚症状のある者(有訴者)」であると言われています。男女ともに「腰痛」「肩こり」が1位、2位を独占していますが特に女性は肩こりの症状を抱えている割合が下記グラフからもわかると思います。

性別にみた有訴者率の上位5症状(複数回答)
厚生労働省(2022年) 国民生活基礎調査概況より引用
多くの女性は肩こりなど自覚症状があったとしても、症状を抱えながら仕事や家事などを優先してしまいがちです。肩こりを抱えたまま働き続けると集中力の低下や疲労感の増大につながり、結果的に仕事の効率も落ちることがわかっています。肩こりは仕方がないものと思って我慢するのではなく、スキマ時間にストレッチを取り入れることがデスクワークや家事育児での疲労を蓄積させないポイントになります。
[ストレッチ方法]
肩こりの原因は背中ではなく胸の前の硬さが原因となっていることが多いので胸の前をストレッチしていきましょう。
①壁の真横に立ち肘から腕を壁に付ける
(大胸筋は3方向に分かれ、上部・中部・下部で腕の向きを変え、伸ばす部位を変える)
②体幹を壁と反対側に回す
③伸びを感じるところで10秒キープ(目安セット10×各5回)



【足のむくみ対策】
調査によると働く女性の約8割が足のむくみを感じています。特に秋や冬や長時間の立ち仕事・座り仕事で強く感じる人が多いとされています。
第5回 足のむくみに関する調査 株式会社フジ医療器
主な症状としては「足が重くてだるい」「靴下の跡が消えない」「夕方になると足がパンパンになり靴がきつく感じる」などを訴えることが多いです。さまざまな対応方法がありますがこのコラムではデスクに座って(通勤時間でもOK)簡単にできるエクササイズをご紹介します。
[ストレッチ方法]
ももの内側の筋肉を働かせます。ももの内側の筋肉は内転筋といいますが、骨盤の安定や血流促進に関わるためふくらはぎだけでなく足全体の循環を助ける働きがあります。
①骨盤を立てる(反りすぎない)
②膝を開いた状態から膝を閉じて5秒間キープして力を抜く(10回程度繰り返す)
膝の間にタオルがあるとよりやりやすくなります。


“習慣化”を続けるための仕組みづくり
【トリガー習慣】
行動科学の研究では、行動の引き金となる刺激があると新しい行動が定着しやすいことが示されているため、モチベーションに頼るよりも、既存の習慣に新しい行動を結びつける方が持続率が高いとされています。通勤時やデスクワーク中にできるエクササイズをお伝えしましたが、習慣化するためにはルーティンになっていることに合わせて行うことが重要です。例えば「〇〇駅の階段だけはお尻の筋肉やももの裏側を意識して上る」であったり、「自宅から〇〇駅までは歩幅を広くして歩く意識をする」というように必ず行う行動に紐づけていきましょう。
【見える化】
健康習慣の見える化としては、アプリなどで歩数や階段を上った段数など計測ができるものがあるため、それを日課として確認していくことで積み重ねていくことで持続率につながっていきます。
今はスマートウォッチやスマートリングのように簡単に心拍数や歩数、消費カロリーなどの測定が行えることや通知機能などもあるため、より習慣化につなげるためのサポートに繋がりやすいので本格的に取り組んでいきたい方にはおすすめです。
小さな積み重ねが大きな健康投資になる理由
【短時間でも効果が積みあがる科学的根拠】
1分間の運動でも血流改善や筋肉の活性化に効果が得られるという研究データがあり、特にデスクワークなどの生活に「短い運動を挟む」ことで集中力などが改善されることが示されています。例えば代謝改善などに変化が起こるとされていますが、「代謝=体のエンジン」ですので、代謝が落ちていると冷えや疲労感などに繋がってくるとされています。特に女性の悩みに多い。冷えやむくみの改善にも影響を及ぼすとされています。
精神的な効果もあり、脳への血流が増加することで集中力向上や気分改善につながるとされています。短時間でもこまめに取り入れることでより効果が得られやすくなっています。
参考:Fitness basics-Mayo Clinic
企業ができる取り組み事例
福利厚生などでの健康支援に関する特別なプログラムを導入することはハードルが高くなる傾向がありますが、「小さな習慣」を組み込む仕組みを整えることが長期的な健康投資につながります。
運動習慣などは上記にあげたように習慣化のハードルが最も高いため、まずはこの仕組みを整えていくことが重要です。アプリなどを利用しながら、社内でイベントごととして「歩数チャレンジ」や「睡眠改善キャンペーン」などを実施し数値共有などでモチベーションを保つことができます。NTTでは健康状態の可視化を通じて生活習慣改善を促す施策を導入するなど、習慣の「見える化」に注力しています。
運動習慣に繋がるものとしては、1分間ストレッチや階段利用を促す社内ポスター、リマインダーなどを設置したり、デスクワーク中心の職場では1時間に1回は立ち上がるなどのルールを設けている企業もあるようです。
企業は「小さな習慣を仕組み化」することで従業員の健康投資を後押しすることができます。見える化、女性特有の課題対応、環境整備、などを組み合わせると従業員の健康意識が高まり生産性や定着率の向上にもつながります。
まとめ
仕事だけでなく、家事や育児、介護などに忙しい女性にとって、ほんの1分でも身体を動かすことが未来の大きな健康投資になるということがわかったと思うので、通勤時間や家事など、オフィスでできることも含めて取り入れられるものから取り入れていきましょう。ストレッチや深呼吸でも積み重ねれば大きな健康投資になります。大きなことを始めるにはさまざまなハードルがある場合が多いため、まずは“やってみよう”と思える小さな1歩から始めてみましょう。弊社では国家資格を保有している理学療法士や作業療法士が運動指導やヘルスリテラシー向上のための研修、オフィスに出張してストレッチや施術を行うサービスやグループセッションなども行っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
〈記事執筆〉

熱海 優季
【保有資格・修了】
理学療法士免許
アメリカ理学療法士協会認定「骨盤底の理学療法Level1」修了
【執筆】
『女神筋(骨盤底筋)が目覚める! 「女性のヨガと子宮の整体法で女性の不調と悩みを解決! 」』
『女性の不調と悩みを解決!! 女性のヨガと子宮の整体法』
【取材掲載】
- ◉もっと健康に、もっと美しく 日経ヘルス2015年1月号
- ◉セラピスト 2014年12月号 DEC. vol.76 子宮の機能を高める
「整体」+「セルフケア」 骨盤底筋群と骨盤の総合ケアで婦人科系トラブルを一掃! 監修 - ◉セラピスト2013年12月号 DEC vol.70 「セラピー」+「国家資格」で夢・想いを叶える
- ◉アイセイ薬局2015年冬号 ヨガで快尿
これまで延べ20,000人のリハビリや運動指導に携わり、ウィメンズヘルスの分野では専門家や一般向けの講演件数100件以上、上場企業などでのセミナーも開催。
新人時代に出会った患者様の『生理が始まってから1度も自分の身体が健康だと思えた日がない』という言葉に衝撃を受け、ウィメンズヘルスの領域を専門に学び始める。現在は産前産後の女性や生理関連の不調、更年期など女性特有のライフステージの変化に伴う身体の不調に対して運動指導や施術などを行っている。
また女性向けの健康経営にも携わり、コンテンツの作成や、ヘルスリテラシー向上のために企業で働く従業員向けのウェビナーやイベントなども実施。自身も3児の母。
弊社では、国家資格を保有している理学療法士や作業療法士が運動指導やヘルスリテラシー向上のための研修、オフィスに出張してストレッチや施術を行うサービスなどを行っております。数名の企業から大企業まで、業種問わず、良い評価をいただいております。
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