2026.1.31
健康経営 女性活躍推進 女性の身体の悩み【理学療法士が解説】がんばらないデスクワーク環境の整え方
理学療法士としてデスクワークに従事する従業員の皆様に関わる中で、「姿勢を意識しているつもりでも、正解がわからない」「良い姿勢を保ち続けるのが難しく気づくと崩れている」「そもそも良い姿勢とは何かが曖昧だと感じる」などの声を聞くことが多くあります。実際に、業務に集中しながら理想的な姿勢を維持することは想像以上に難易度が高く、意識すればするほど余計な部分にも力が入ってしまうこともあります。業務中にはがんばらずにちょっとしたポイントでデスクワーク環境を整え、無理なく姿勢を支える環境作りができることがとても重要な点です。姿勢もすぐに変化が出て良い姿勢が持続できるわけではないため、姿勢を「育てる」という視点を持つことで小さな積み重ねに繋がっていきます。環境を整えるためのヒントをご紹介していきます。
データでみる日本人の1日の座位時間とは?
【平均座位時間と国際比較】
日本人の座位時間は世界的に見ても非常に長い傾向があります。平均座位時間は約7時間とされており世界20か国中で最長という調査結果もあります。
厚生労働省の調査によると以下のような特徴が明らかになっています。
- ◉平日1日の座位時間が8時間以上の人は男性で38%、女性で33%
- ◉高齢者ではテレビ視聴も含む座位時間が1日10時間以上に達することもある
- ◉コロナや在宅勤務の影響で、座位時間はさらに増加傾向にあると推測される
【座りすぎがもたらす健康リスク】
長時間の座位は、以下のような健康リスクと関連しています
- ◉心血管疾患のリスク増加
- ◉2型糖尿病や肥満の発症リスク上昇
- ◉筋骨格系の不調(腰痛・肩こり・下肢のむくみ)
- ◉集中力や認知機能の低下
さらに、座位時間が1日7.5時間以上超えると死亡リスクが上昇し、9.5時間を超えるとそのリスクはさらに高まるという研究結果もあります。
運動の習慣がある場合でも、日中の“座りすぎ”そのものを見直す必要があり、長時間の座位が続くことが健康リスクが高まると報告されています。
参考資料:健康日本21アクション支援システム Webサイト、厚生労働省座りすぎ健康リスク
姿勢が崩れる理由とは?
「姿勢を正しく保つ」ことは、業務中に長時間維持することはほぼ不可能です。その背景には、身体的・環境的・心理的な複数の要因が関係しています。
【身体の構造によるもの】
姿勢を保つには、骨格と筋肉のバランスが重要で、特に姿勢を支える筋肉が適切に働くことで無理なく姿勢を支えることができます。しかし、運動不足などで長時間の同一の姿勢によりこれらの筋力が低下すると骨盤を安定させることが難しくなり、骨盤が後ろに倒れてしまい結果的に猫背傾向になってしまう場合と、骨盤が前に倒れ机にもたれかかるような姿勢で反り腰傾向になってしまうパターンなどがあります。背骨や股関節の柔軟性が低下することによって、代わりに腰や首に負担がかかりさらに姿勢が崩れやすくなってしまいます。
【身体機能の低下】
姿勢の崩れは感覚入力の低下とも深く関係しています。例えば長時間同じ姿勢を続けていると自分の身体の傾きや重心のズレなどに気づきにくくなります。人は無意識のうちに目からの情報や、身体や頭の傾きなどのバランスや、自分がどんな姿勢をしているかという感覚などによって複数の感覚を統合しながら姿勢を調整しています。これが長時間同じ姿勢を続けたり疲労感やストレスなどが重なると感覚の統合などがうまくいかなくなり姿勢のズレに気づきにくくなっていまいます。
もう一つ見逃せない要素として呼吸のパターンです。デスクワークでは肩に力が入りやすくなり浅い呼吸が続き肩呼吸が続くと、呼吸をする際に働く横隔膜や体幹のインナーマッスルなどの活動が低下し、体幹の安定性が損なわれてしまいます。猫背姿勢や反り腰ではとくに横隔膜の働きは制限され、呼吸が浅くなるという悪循環にも陥りやすくなります。この状態が続くと疲労感や集中力の低下、自律神経の乱れにも繋がる可能性があります。
参考資料:感覚入力における姿勢変化
【環境の要因】
環境の要因は最も重要であり、姿勢が崩れやすいセッティングになっていないかを確認する必要があります。
椅子や机、モニターの高さなどが合っていないと、無意識に身体をねじったり、前かがみの姿勢になりやすくなります。例えばモニターが低すぎると首が前に出やすくなり、肩や背中に負担が集中します。また足が床に届かないような椅子では座るときの姿勢が安定しにくく腰や首などの負担が増加することがあります。努力して姿勢を保つのではなく、崩れにくい環境を整えることが重要です。その他に、証明などの明るさや室温の不快感も集中力や身体の緊張に影響し、姿勢の崩れを引き起こす要因となります。
【心理的要因】
業務に集中していると、身体感覚が鈍くなり、姿勢の崩れに気づきにくくなることがあります。またストレスや疲労による筋緊張は肩をすくめる、背中を丸めるといった姿勢にもなりやすくなります。姿勢↔感情は互いに影響しあうため、猫背やうつむいた姿勢は、呼吸を浅くし、脳への酸素共有を減らすことで、思考力や判断力の低下、不安感の増大につながるとされています。反対に背筋を伸ばした姿勢は自信や活力を高め、ネガティブ思考の頻度を減らすという実験結果も報告されています。
参考資料:姿勢とストレスコーピングとの関係
椅子、机、モニターの“ちょうどいい”ポイント
【基本のセッティング】
椅子や机の高さは、人間工学で用いられる「身体寸法に基づく計算式」を使うと、自分の身長に合った目安を出すことができます。
これは家具メーカーや人間工学ガイドでも広く採用されている方法で、一般的なデスクワーク環境づくりに有効です。がんばらずに姿勢が整う環境は次の3点がポイントになります。
- ◉椅子の高さ
身長から割り出すと、より体に合った高さが設定できます。
椅子の高さ=身長×0.25-(0~2)㎝
(例)身長160㎝→約40㎝前後
足裏がしっかり床につき、膝が90°になる高さが理想です。 - ◉机の高さ(作業面の高さ)
肘が90°でキーボードに手が届く高さが基本ですが、数式で求めるとさらに調整しやすくなります。
机の高さ=身長×0.25-(0~2)㎝+身長×0.183-(0~2㎝)
(例)身長160㎝→約40㎝+約29㎝=約69㎝前後
既成の机が高すぎる場合は椅子を上げて足台を使うとバランスが整います。 - ◉モニターの位置
目線より少し下、顔から40~70㎝くらいで首が前に出ない位置に調整すると、肩・首の負担が大きく減ります。

自分専用のデスクや椅子を用意することが理想ですが、オフィスでは自分にデスクの高さなどを合わせることは難しい場合があります。そのため足台やクッションなどの補助アイテムの活用もデスク環境を整えるポイントになります。
【骨盤を立てる座り方と坐骨の意識】
「姿勢を正す」ではなく、坐骨え座るイメージがポイントです。坐骨(お尻の下のとがった骨)を椅子にあてると自然と骨盤が立ち、背筋を頑張って伸ばさなくても背骨が無理なく起こすことができます。
身体をリセットする動きのスイッチ
【30分に1回のゆるく動くが効く】
長時間座ること自体はデスクワークの場合は避けにくいですが、30分に1回、軽く身体を動かすだけで、血流・姿勢・集中力がリセットされます。これは「運動」ではなく、「スイッチを入れる」ような感覚です。たった30秒でも身体は座りっぱなしから抜け出せます。
【肩・股関節・呼吸を使った簡単リセット動作】
理学療法士としておすすめしたいのは“呼吸を意識したゆるい動き”です。深呼吸をしながら下記の動作を行ってみてください。
◉肩甲骨をゆっくり回す(前後に3回ずつ)
◉股関節を開いて閉じる(座ったまま膝をパタパタ)
◉足首を動かす
服装や場所を選ばず実践できるのがポイントです。「ちょっと動くと気持ちいい」くらいの感覚で行いましょう。
姿勢を整えるがんばらないセルフケア
【姿勢は“意識”ではなく“環境と習慣”で整える】
「姿勢を正さなきゃ」と思っていても、意識し続けるのは難しいものなので、“意識頼み”の姿勢改善はほぼ続きません。
だからこそ、
◉足台やクッションなどの補助アイテムの活用
◉坐骨で座る座り方
◉モニターや意思の高さ調整
といった環境側の工夫が、がんばらないセルフケアのカギになります。
【1日の終わりの“ゆるストレッチ”】
日中の姿勢負担を翌日に持ち越さないことも大切です。
長時間座りっぱなしだと、お尻やももの裏の筋肉は硬くなりやすいので下記のストレッチがおすすめです。
お尻(大殿筋)のストレッチ

もも裏(ハムストリングス)のストレッチ

【猫背】胸を開くストレッチ

【首の前側のストレッチ】
胸に手を当てて首を斜め後ろに倒す

まとめ
デスクワークの姿勢は意識しても続かないものです。人の身体は長時間同じ姿勢を保つようにはできていないからこそ、環境を整え、小さな動きを挟むことが一番効果的です。椅子や机、モニターの高さを自分の体に合うように設定したり、足台やクッションなどの補助アイテムを活用する、坐骨で座るなどの無理のない姿勢の取り方を知る、30分から1時間程度に1回はゆるいリセットをいれるなど、環境を設定するだけでも変化があります。日々の積み重ねで悪い姿勢習慣になってしまっているのであれば、ちょっとした工夫で体に負担の少ない姿勢習慣を作ってみましょう。
〈記事執筆〉

熱海 優季
【保有資格・修了】
理学療法士免許
アメリカ理学療法士協会認定「骨盤底の理学療法Level1」修了
【執筆】
『女神筋(骨盤底筋)が目覚める! 「女性のヨガと子宮の整体法で女性の不調と悩みを解決! 」』
『女性の不調と悩みを解決!! 女性のヨガと子宮の整体法』
【取材掲載】
- ◉もっと健康に、もっと美しく 日経ヘルス2015年1月号
- ◉セラピスト 2014年12月号 DEC. vol.76 子宮の機能を高める
「整体」+「セルフケア」 骨盤底筋群と骨盤の総合ケアで婦人科系トラブルを一掃! 監修 - ◉セラピスト2013年12月号 DEC vol.70 「セラピー」+「国家資格」で夢・想いを叶える
- ◉アイセイ薬局2015年冬号 ヨガで快尿
これまで延べ20,000人のリハビリや運動指導に携わり、ウィメンズヘルスの分野では専門家や一般向けの講演件数100件以上、上場企業などでのセミナーも開催。
新人時代に出会った患者様の『生理が始まってから1度も自分の身体が健康だと思えた日がない』という言葉に衝撃を受け、ウィメンズヘルスの領域を専門に学び始める。現在は産前産後の女性や生理関連の不調、更年期など女性特有のライフステージの変化に伴う身体の不調に対して運動指導や施術などを行っている。
また女性向けの健康経営にも携わり、コンテンツの作成や、ヘルスリテラシー向上のために企業で働く従業員向けのウェビナーやイベントなども実施。自身も3児の母。
弊社では、国家資格を保有している理学療法士や作業療法士が運動指導やヘルスリテラシー向上のための研修、オフィスに出張してストレッチや施術を行うサービスなどを行っております。数名の企業から大企業まで、業種問わず、良い評価をいただいております。
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