2026.4.25
女性の健康【理学療法士が解説】生理前に肩こりが悪化するのはなぜ?
「生理前になると肩こりがひどくなる気がする」「頭痛も出やすくなる」
そんな経験はありませんか。肩こりは多くの人が抱える身近な不調ですが、女性の場合、月経周期による体の変化が症状に影響することがあります。全国10万人を対象にした調査では、72.5%の人が首筋や肩こりを感じていると報告されており、特に女性ではその割合が高いことが知られています。
本記事では、生理前の時期に肩こりが悪化しやすい理由について、身体の仕組みとともに理学療法士の視点で解説します。

目次
多くの女性が悩む「肩こり」
日本人の肩こりの実態
肩こりは、多くの人が経験する身近な身体の不調の一つです。
全国10万人を対象にした調査では20~30代の働き盛りの72.5%の人が首筋や肩こりを感じていると報告されています。特に女性ではその割合が高く、78.1%の女性が肩こりを自覚しているという結果も示されています。
このように肩こりは非常に多くの人が抱えている症状ですが、実は肩こりの原因となっている背景は個人によってさまざまです。
全国10万人の調査より| 一般社団法人日本リカバリー協会のプレスリリース
働く女性に多い理由
働く女性に限らず、現代の生活環境には肩こりが起こりやすい要因が多く含まれています。
働く男性や、仕事をしていない女性であっても、1日の中で座っている時間が長かったり、スマホを使用する時間が長かったりすることは少なくありません。
研究では、長時間座る生活習慣は筋骨格性の痛みと関連することが報告されており、特に仕事中に長時間座り続けることは、首や肩の痛みのリスクと関係する可能性があるとされています。 参考資料
また、女性では家事や育児を担う場面も多く、日常生活の中で肩や首に負担がかかりやすい状況があります。このように生活スタイルを見てみると、肩こりの原因となりうる要素が身近なところに多く存在していることがわかります。
こうした生活要因に加えて、女性の場合は月経周期による身体の変化が肩こりに影響している可能性もあります。

「筋肉が硬い=肩こり」とは限らない
肩こりの基本メカニズム
肩こりというと、「肩の筋肉が硬くなっている状態」とイメージされることが多いかもしれません。しかし実際は、筋肉の硬さだけで肩こりが説明できるわけではありません。
身体の状態として
- ◉筋肉はそれほど硬くないのに強い痛みを感じる
- ◉触ると筋肉が硬いのに痛みはない
といったケースも少なくありません。
これは痛みが「筋肉の硬さ」だけで決まるものではないためです。
痛みには筋肉の状態だけでなく、血流や神経の働き、疲労の蓄積など、さまざまな要素が関係しています。
例えば同じ筋肉の状態であっても、長時間同じ姿勢を続けることで筋肉の血流が低下するとだるさや重さを感じやすくなることがあります。また、筋肉が弱い力で収縮し続ける状態が続くと、疲労物質が蓄積し、不快感や痛みとして感じられることもあります。
このように肩こりは単に「筋肉が硬くなること」だけではなく、筋肉の使われ方や血流、神経の働きが複合的に関係して起こると考えられています。
そのため、肩こりを考えるときには、筋肉の硬さだけでなく、「どのように筋肉が使われているか」という視点も重要になります。
弱い力の持続が肩こりを生む
肩こりは、重いものを持ったときのような「強い力」によって起こるイメージがあるかもしれません。しかし、弱い力が長時間続くことが大きな要因になると考えられています。
例えばデスクワークでは
- ◉頭の重さを支える
- ◉腕をキーボードの位置に保つ
- ◉画面を見続ける
といった状態が長時間続きます。
このとき首や肩の筋肉は大きな力を出しているわけではありませんが、弱い力で収縮し続ける状態になります。
筋肉は収縮すると内部の血管が圧迫されるため、長時間同じ状態が続くと筋肉への血流が低下しやすくなります。血流が低下すると、筋肉に疲労物質がたまりやすくなり、重だるさや痛みとして感じられることがあります。
特に首や肩の筋肉は、日常生活の中で、頭や腕を支える役割を担っているため、デスクワークなどで同じ姿勢が続くと常に同じ筋肉に負担が蓄積しやすくなってしまいます。
このように肩こりは、強い負荷によるものというよりも、小さな負担が長時間積み重なることで起こると考えられています。
生理前の身体の変化(PMSとは?)

PMS(月経前症候群)とは?
PMSとは、月経前に現れるさまざまな身体的・精神的症状のことを指します。
症状には、むくみや頭痛、だるさ、乳房の張りなどの身体症状のほかに、イライラや気分の落ち込み、集中力の低下といった精神的な症状もあります。その種類は非常に多く、約150~200種類くらいの症状があるとも報告されています。(月経前症候群(PMS)の症状)
またPMSは特別な人だけに起こるものではありません。研究では女性の約70~80%が何らかのPMS症状を経験すると報告されています。症状の程度には個人差がありますが、日常生活や仕事のパフォーマンスに影響を感じる人も少なくありません。
月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS) – 公益社団法人 日本産科婦人科学会
このようにPMSは多くの女性が経験する身近な身体の変化の一つです。月経周期に伴うホルモンバランスの変化は、気分だけでなく身体の状態にも影響を与えることが知られています。肩こりの感じ方もその影響を受ける可能性があります。
月経周期とホルモン
女性の身体は月経周期に伴い、女性ホルモンのバランスが大きく変化しています。月経周期は一般的に約1か月のサイクルで繰り返され、その中で主に“エストロゲンとプロゲステロン”という2つのホルモンが増減します。
排卵後から月経前にかけては、プロゲステロンの分泌が増える時期になります。このホルモンは体温を上昇させたり、体内の水分をため込みやすくしたりする作用があることが知られています。そのため、この時期にはむくみやだるさなどの身体症状を感じやすくなる人もいます。
また月経周期によるホルモンの変化は、自律神経の働きにも影響すると考えられています。自律神経は血流や体温調節、筋肉の緊張などに関わるため、そのバランスが変化すると身体のコンディションにも影響が現れることがあります。
このように女性の身体は月経周期の中でさまざまな変化を繰り返しています。こうした身体の変化は気分や体調だけでなく、筋肉の状態や痛みの感じ方にも影響する可能性があります。肩こりもその一つとして、月経前の時期に強く感じられることがあると考えられています。
月経前症候群(PMS)の実態調査と治療指針の作成(小西郁生 ほか)
生理前の時期に肩こりが悪化する理由
痛みを感じやすくなる
月経前の時期に肩こりを強く感じる理由の一つとして、痛みの感じやすさの変化が考えられます。
女性の身体は月経周期に伴い、ホルモンバランスが大きく変化します。このホルモン変化は気分や体調だけでなく、痛みの感じ方にも影響するといわれています。研究では女性は月経周期によって痛みの感じやすさが変化する可能性があることが報告されています。
そのため、同じ筋肉の状態であっても、月経前の時期には、普段よりも肩や首の不快感を強く感じることがあります。デスクワークなどで、首や肩の筋肉に疲労が蓄積している場合、このような身体の変化が重なることで、肩こりがより強く感じられる可能性があります。
※参照例:Changes of heat pain sensitivity during the menstrual cycle in Japanese young adults(2020年)
むくみと血流
月経前の時期には、身体の水分バランスにも変化が起こります。排卵後から月経前にかけて分泌が増えるプロゲステロンの影響により、身体に水分がたまりやすくなることが知られています。そのため、この時期にはむくみを感じやすくなる人も少なくありません。
身体がむくむと筋肉の周囲にある組織の環境にも変化が起こる可能性があります。
筋肉やその周囲の組織では、通常それぞれの組織がなめらかに働くことで身体の動きがスムーズに行われています。しかし、体液バランスが変化すると組織のすべりが低下し、筋肉が働きにくくなることがあります。
こうした状態では筋肉の疲労がたまりやすくなり、首や肩の重だるさや不快感として感じられることがあります。月経前の時期に肩こりが強くなる背景にはこのような身体の変化も関係している可能性があります。
アントニオ・ステッコ博士らの論文(筋膜とヒアルロン酸の粘性)
自律神経
月経前にはこうした体液バランスの変化に加えて、自律神経の働きにも変化が生じるといわれています。月経周期に伴うホルモンの変化は、自律神経のバランスにも影響すると考えられています。
自律神経は血流、体温調節、筋肉の緊張などを調整する役割を担っています。そのため自律神経のバランスが変化すると筋肉の血流が低下したり、筋肉が緊張しやすくなったりすることがあります。首や肩の筋肉は、日常生活の中で頭や腕を支える役割を担っているため、もともと疲労が蓄積しやすい部位です。そこに月経前の身体の変化が重なることで、普段より肩こりを強く感じることがあると考えられます。
PMS/PMDD研究の動向を探る
生理前の時期の肩こりとの付き合い方
同じ姿勢を続けない
肩こり対策としてまず意識したいのが、同じ姿勢を長時間続けないことです。デスクワークでは、首や肩の筋肉が弱い力で収縮し続ける状態になりやすく、血流が低下して疲労が蓄積しやすくなります。定期的に立ち上がったり、肩や肩甲骨を軽く動かしたりすることで、筋肉の血流を改善し、肩こりの予防につながります。
呼吸と血流
呼吸も肩こりと深く関係しています。仕事に集中していると呼吸が浅くなりやすく、胸や肩まわりの筋肉が緊張しやすくなります。ゆっくりと深い呼吸を意識することで胸郭が動きやすくなり、肩周囲の筋肉の負担を軽減することが期待できます。呼吸を整えることは、自律神経のバランスを整えることにもつながります。

身体のリズムを知る
女性の体は月経周期の影響を受けながら、日々コンディションが変化しています。生理前の時期に肩こりが強くなると感じる場合は、自分の体のリズムを理解することも大切です。体調の変化に合わせて休息をとったり、セルフケアを取り入れたりすることで、無理なく体のコンディションを整えることにつながります。
まとめ
肩こりは単に「筋肉が硬くなること」だけが原因ではありません。
特に女性の場合、ホルモン変化や自律神経の影響など、月経周期による身体の変化も関係している可能性があります。
生理前の時期は体調の変化が起こりやすいタイミングでもあります。
同じ姿勢を続けないことや、軽く身体を動かすことなど、日常の中で身体をリセットする習慣を取り入れることも大切です。
女性の身体は一定ではなく、リズムの中で変化しています。 身体の変化を理解しながらコンディションを整えることが、働き続けるためのセルフケアの一つといえるでしょう。
〈記事執筆〉

熱海 優季
【保有資格・修了】
理学療法士免許
アメリカ理学療法士協会認定「骨盤底の理学療法Level1」修了
【執筆】
『女神筋(骨盤底筋)が目覚める! 「女性のヨガと子宮の整体法で女性の不調と悩みを解決! 」』
『女性の不調と悩みを解決!! 女性のヨガと子宮の整体法』
【取材掲載】
- ◉もっと健康に、もっと美しく 日経ヘルス2015年1月号
- ◉セラピスト 2014年12月号 DEC. vol.76 子宮の機能を高める
「整体」+「セルフケア」 骨盤底筋群と骨盤の総合ケアで婦人科系トラブルを一掃! 監修 - ◉セラピスト2013年12月号 DEC vol.70 「セラピー」+「国家資格」で夢・想いを叶える
- ◉アイセイ薬局2015年冬号 ヨガで快尿
これまで延べ20,000人のリハビリや運動指導に携わり、ウィメンズヘルスの分野では専門家や一般向けの講演件数100件以上、上場企業などでのセミナーも開催。
新人時代に出会った患者様の『生理が始まってから1度も自分の身体が健康だと思えた日がない』という言葉に衝撃を受け、ウィメンズヘルスの領域を専門に学び始める。現在は産前産後の女性や生理関連の不調、更年期など女性特有のライフステージの変化に伴う身体の不調に対して運動指導や施術などを行っている。
また女性向けの健康経営にも携わり、コンテンツの作成や、ヘルスリテラシー向上のために企業で働く従業員向けのウェビナーやイベントなども実施。
自身も3児の母。
弊社では、国家資格を保有している理学療法士や作業療法士が運動指導やヘルスリテラシー向上のための研修、オフィスに出張してストレッチや施術を行うサービスなどを行っております。数名の企業から大企業まで、業種問わず、良い評価をいただいております。
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