2024.12.28

健康経営 セルフケア

健康経営は「座りすぎ」の対策から?1日7時間以上座ることによるリスクや対策を理学療法士が徹底解説。

健康経営 セルフケア

シドニー大学が行なった調査によると、日本人の座位時間は『7時間』だそうです。これは、調査を行なった世界20か国における平日の総座位時間の中で最長です。1日7時間以上座ることで様々な不調を引き起こすことがわかっています。この記事では、身体のプロである理学療法士が「座りすぎ」によるリスクと対策方法を解説します。

座りすぎは不調を引き起こす

京都府立医科大学の研究グループは、6万人を超える日本人を7年間追跡したデータを用いて、座っている時間が長いほど死亡リスクが増加することを確認しています。また、長時間座り続けることで血流や筋肉の代謝が低下してしまいそれに伴いさまざまな問題が引き起こされることがわかっています。

データ引用元:https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.120.018293?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

「座りすぎ」は死亡リスクをあげる

「座りすぎ」が原因でおきる症状には、下記のようなものが考えられます。

  • ◉心筋梗塞
  • ◉脳血管疾患
  • ◉肥満
  • ◉糖尿病
  • ◉がん
  • ◉認知症
  • ◉メンタルヘルスの不調

では、なぜ「座りすぎ」が死亡リスクにつながるのでしょうか。

長時間座りっぱなしでいることで、体の循環が悪くなることはなんとなくイメージできる方も多いのではないかと思います。これは血液が身体の中をしっかり流れ循環しているということがまずとても大切なことだということです。下肢の筋肉であるふくらはぎですが、ふくらはぎは「第2の心臓」と耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。下肢の筋肉の収縮によって血流のポンプ機能が働き循環を助けてくれます。実は下半身の筋肉は60〜70%を占めるため、下肢の筋肉を動かすことの少ない長時間の座位では血液循環の低下が起こります。血液循環の低下により、動脈硬化が起こり、その結果高血圧、糖尿病など生活習慣病、肥満のリスクや、骨粗鬆症を引き起こす原因になってしまうのです。

深刻な慢性痛にも繋がる

また、「座りすぎ」は慢性疼痛のリスクにも繋がります。

座っている時間が長くなると肩こりや慢性疼痛の原因になります。慢性疼痛は労働生産性に大きな影響を及ぼすことが、多くの研究で明らかになっています。ある研究では、プレゼンティーズム(※1)に大きな影響を及ぼす原因として、第1位に首・肩の痛み、第3位に腰痛がランクインしています。(※2)

1位「首・肩の痛み」
2位「睡眠不足」
3位「腰痛」

(※1 プレゼンティーズム:出社はしているものの、健康問題が理由で生産性が低下している状態)
(※2 Nagata T et al. Journal of Occupational and Environmental Medicine: May 2018)

座っているときに腰へかかる負担を100%とすると、寝ているときで25%で座っているときで140%と言われています。

一見、座っていることで楽に感じられるかもしれませんが、実は立っているよりも座っている方が腰への負担が大きいとされているのです。長時間座ることによって腰への負担が増加しているのです。5人に2人は腰痛と言われる時代に、腰への負担をいかに減らすかが重要な課題となります。慢性的な腰痛を抱えることで従業員の生産性を下げ、慢性痛は、個々の従業員の健康問題にとどまらず、企業全体の生産性や競争力に多大な影響を及ぼします。「慢性疼痛の医療経済学的検討」によると、慢性痛による労働損失は日本で年間約1兆9,530億円に上るとされています。集計されていない就労機会の喪失・低下、家族の介護の負担も考慮すると、慢性疼痛による経済損失は更に大きいと推測されます。

「座りすぎ」に対する対策と良い座り方とは?

こまめに立つ時間を作ることが座りすぎ対策にとっては最もよいことですが、日頃から意識しないとできることではありません。

身体の負担が少ない座り方とはどのような座り方でしょうか?
まず大きくわけて2つのパターンがあるので確認してみましょう。

① 良い姿勢にしても腰は辛くない、痛くならない
② 良い姿勢にするとより痛みが増す、辛い

それぞれ解説していきます。

①良い姿勢にしても腰は辛くない、痛くならない

この場合は、日頃の悪い姿勢で作業していることが原因と考えられるので、積極的に良い姿勢を取ることに努めましょう。ただ作業中に良い姿勢を取り続けることは難しいので以下の3つの方法を試していただき楽に座れるものを選んでみましょう。

a.坐骨の下にタオルを入れる

入れっぱなしで座るより座り始めにいれて、坐骨に座る感覚がつかめたら外します。座りなおす際に再度タオルを入れて座りましょう。

b.股の間に入れる

aと同様、座り始めにタオルを入れます。楽に座れる感覚がつかめたら外しましょう。(5分程度でOK)また座り直す際に、再度タオルを入れて座ります。

c.胸の後ろにタオルを入れる(深く腰掛ける場合)

入れたままでも問題ありません。肩甲骨の下あたりにタオルをいれておきましょう。

このように座ることによって骨盤が楽に立ち、関節の構造上安定した位置になるため筋肉や関節への負担も軽減されて腰の痛みが楽になります。
継続して行ってみましょう。

②良い姿勢にするとより痛みが増す、辛い

このタイプは今の状態では『良い姿勢』が逆に痛みが増す姿勢になってしまっているということです。良い姿勢を取れない原因や制限となる場所が身体の中(腰以外にも)隠れていることが考えられます。この場合は専門機関などに相談に行くことが良いかもしれません。

このあと紹介するストレッチやエクササイズは痛みが増すことがなければ行っても大丈夫です。

座り方のセルフチェック

①坐骨が感じられる
②足が床についている
③浅く腰掛ける(もも裏の多くの面が座面に接していない)

努力して良い姿勢を取り続けることはできません。なので良い姿勢にしようと思って腰が頑張り力が入り続けてしまうような姿勢は腰の負担につながるため、坐骨を意識して座ることができればOK。
坐骨に座ることが難しい場合は②に当てはまるので無理して良い姿勢を取らない方がよいです。

どんなに良い姿勢だとしても同じ姿勢を取り続けることは通常できませんので、姿勢を崩す時間があってもOKです。気づいたときに意識して座ってみましょう。

パターン2
①坐骨が感じられる
②足が床についている
③お尻が背もたれにつくくらい深く座る

深く座る場合の注意点として、胸の後ろにタオルを入れることです。タオルを入れずに深く座ってしまうと背もたれにどうしても寄りかかりたくなるため、不良姿勢になりやすくなります。

良い座り方を保つためのオフィスで出来るストレッチ/エクササイズ

良い姿勢を取りやすくするためのストレッチをお伝えします。

骨盤を起こして坐骨に座ることができるようにするためのストレッチ(2つ)

【ハムストリング】

1.浅く腰掛け、片足を前方へ。
2.身体を丸めないようにまっすぐ前に倒す

【大殿筋】

1.浅く腰掛け、片足を反対のももの上に乗せる
2.身体を丸めないようにまっすぐ前に倒す

下肢の血流を改善する(2つ)

【その場で足踏み(腸腰筋エクササイズ)】

1.骨盤を起こして浅く腰掛ける
2.身体をまっすぐにしたまま足上げを10回繰り返す

【内もも収縮】

1.両膝をつけたまま浅く腰掛ける
2.10秒間両膝を閉じるように力を入れ続ける

まとめ

「座りすぎ」によって起こる身体の不調として、命に関わるものから慢性疼痛による身体的な弊害、そして社会的損失にもつながることをお伝えしました。
オフィスで働く従業員にとっては喫緊に改善しなくてはならない課題です。
日々の積み重ねが、大きな影響につながります。「座りすぎ」によるリスクを少しでも回避できるように、良い座り方や、ストレッチ/エクササイズなどを、少しずつ取り入れていきましょう。

〈記事執筆〉

熱海 優季

【保有資格・修了】
理学療法士免許
アメリカ理学療法士協会認定「骨盤底の理学療法Level1」修了

【執筆】
『女神筋(骨盤底筋)が目覚める! 「女性のヨガと子宮の整体法で女性の不調と悩みを解決! 」』
『女性の不調と悩みを解決!! 女性のヨガと子宮の整体法』

【取材掲載】

  • ◉もっと健康に、もっと美しく 日経ヘルス2015年1月号
  • ◉セラピスト 2014年12月号 DEC. vol.76 子宮の機能を高める
    「整体」+「セルフケア」 骨盤底筋群と骨盤の総合ケアで婦人科系トラブルを一掃! 監修
  • ◉セラピスト2013年12月号 DEC vol.70 「セラピー」+「国家資格」で夢・想いを叶える
  • ◉アイセイ薬局2015年冬号 ヨガで快尿

これまで延べ20,000人のリハビリや運動指導に携わり、ウィメンズヘルスの分野では専門家や一般向けの講演件数100件以上、上場企業などでのセミナーも開催。

新人時代に出会った患者様の『生理が始まってから1度も自分の身体が健康だと思えた日がない』という言葉に衝撃を受け、ウィメンズヘルスの領域を専門に学び始める。現在は産前産後の女性や生理関連の不調、更年期など女性特有のライフステージの変化に伴う身体の不調に対して運動指導や施術などを行っている。

また女性向けの健康経営にも携わり、コンテンツの作成や、ヘルスリテラシー向上のために企業で働く従業員向けのウェビナーやイベントなども実施。自身も3児の母。

弊社では、国家資格を保有している理学療法士や作業療法士が運動指導やヘルスリテラシー向上のための研修、オフィスに出張してストレッチや施術を行うサービスなどを行っております。数名の企業から大企業まで、業種問わず、良い評価をいただいております。

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