2026.5.19

健康経営

最新ツールより大切な“見守る”視点──離れて働く社員の心を繋ぎ止める環境整備の最適解

健康経営

採用難や定着率の低下という重い課題を前に、多くの企業が働きやすさの追求に頭を悩ませています。しかし、きらびやかな福利厚生制度を整えたり、流行の健康支援ツールを導入したりするだけでは、現場の根本的な疲弊や孤独感を拭い去ることはできません。本当に求められているのは、表面的な待遇改善ではなく、働くスタッフの日常的な痛みに寄り添う泥臭い姿勢です。事業内容や組織の規模が全く異なる企業であっても、人が定着する組織の根底には、社員の人生そのものを支えようとする強烈な熱意が存在しています。本稿では、独自の視点で働く環境をデザインし続ける中小企業3社の軌跡をたどり、組織づくりの本質的なヒントを紐解きます。

■ 直行直帰の孤独な現場に、専門的な“癒やし”を届ける──株式会社アワハウス

重度の障害を抱える方々の自宅へ赴き、身体介護や生活援助を行う重度訪問介護。その現場は、常に予測不可能な事態と隣り合わせの過酷な環境です。スタッフの多くは事業所に立ち寄ることなく直行直帰を繰り返し、たった一人で利用者の命と生活に向き合っています。大阪で介護福祉事業を展開する株式会社アワハウスの人事部長である植島氏は、そんなスタッフたちが抱える身体的な痛みと、誰にも相談できない孤独な精神状態に強い危機感を抱いていました。医療や福祉を提供する立場にある組織だからこそ、まずは支援者自身の心身が健やかでなければならない。その痛切な想いが、同社独自の環境整備を力強く推進する原動力となっています。

現場で働くスタッフの平均年齢は40歳。日々繰り返される移乗介助などの身体的負担は、確実に彼らの腰や股関節に深刻なダメージを蓄積させていきます。そこで同社は、専門的なコンディショニングケアの導入に踏み切りました。月に数回、外部のジムから派遣された3名のプロフェッショナルトレーナーが交代で事業所を訪問。スタッフ一人ひとりの痛みの原因を丁寧に探り当て、それぞれの状態に合わせたカスタマイズメニューを提供しています。
これは単なる疲労回復の枠を超え、自身の身体と専門的かつ客観的に向き合う貴重な時間として機能しているのです

また、物理的な距離が離れているからこそ、スタッフ同士の連帯感をどう生み出すかが次の大きなテーマでした。現在、同社は習慣化アプリ「みんチャレ」の導入を進めており、オンライン上で励まし合いながら健康づくりに取り組む環境を構想しています。さらに、就業時間中に活動するeスポーツ事業部を立ち上げ、2名の専任スタッフを配置するという、福祉業界の常識を覆すユニークな試みも展開しています。

決して顔を合わせる機会が多くない職場環境において、彼らが重視しているのは、会社がスタッフの存在を確かに見守っているというメッセージの発信です。日々の業務で擦り減っていく心と身体に対し、専門的なケアと新しい繋がりの場を提供し続けること。株式会社アワハウスが描く未来は、福祉の最前線で戦う人々の人生を根底から支え、誰も孤立させないという強い覚悟に満ちています。
株式会社アワハウス:https://ourhouse.co.jp/company/company.php

■ 常駐という壁を越え、技術者の誇りと繋がりを育む──株式会社ONE WEDGE

自分が所属する会社のオフィスよりも、顧客企業のフロアの景色にすっかり馴染んでしまう。ITエンジニアを顧客先へ派遣するSESという事業構造において、社員の帰属意識の希薄化は、業界全体を覆う重い影のような課題です。200社を超える顧客の多様なニーズに応える株式会社ONE WEDGEの橋田博明CEOは、この構造的な問題から決して目を背けませんでした。異なるプロジェクトに散らばり、顔を合わせることも稀なエンジニアたちが、いかにして同じ会社の仲間としての連帯感を持ち、高いモチベーションを維持し続けられるか。その答えを、彼らは独自のカルチャー醸成と徹底したコミュニケーション施策の中に見出しました。

同社が最も心血を注いでいるのが、インプットとアウトプットを循環させる文化の定着です。客先での閉鎖的な業務に留まることなく、得られた知見を社内の技術ブログを通じて積極的に発信することを推奨しています。個人の頭の中にあるノウハウを組織全体の財産として共有するプロセスは、エンジニア自身の成長を加速させるだけでなく、見えない仲間からの承認を得るための重要な装置となっているのです。さらに、AI研修といった最先端の教育機会を継続的に提供することで、技術者としての誇りを刺激し続けています。

現場が離れているからこそ、人と人との結びつきを生み出す仕掛けはより緻密でなければなりません。同社では、広報の石垣氏を中心に、社員のパーソナリティに迫る丁寧なインタビュー記事を制作・配信しています。すれ違うことすらない同僚の仕事への熱意や意外な一面を知ることで、組織に対する心理的な安全性が醸成されていくのです。また、専門家を招いた健康セミナーや体組成計の導入、プロテインの試飲会など、ユニークな健康支援策も展開。さらには自社のみならず、一般社団法人の運営を通じて業界全体の教育にも貢献しています。

物理的なオフィス空間を共有できなくとも、目指すべきビジョンと互いを認め合う文化があれば、組織は強靭に結びつく。株式会社ONE WEDGEの取り組みは、エンジニア一人ひとりの能力を最大化し、孤独な技術者を自立したプロフェッショナルへと導くための、壮大で温かい仕組みづくりそのものなのです。株式会社ONE WEDGE:https://onewedge.co.jp

■ 地域のインフラを背負う現場に、確かな安全網を敷く──株式会社さのや

山形県天童市で酒類の卸・小売やLPガス販売を手がける株式会社さのや。平均年齢は40歳前後と、地域に根差して長く勤め上げるベテラン層が多いのが同社の特徴です。しかし、飲料の配送や自動販売機の補充を担うセールスドライバーの日常は、常に過酷な重労働と隣り合わせにあります。時には医師から重量物の運搬を控えるよう指導されるスタッフが出るほど、その身体的負担は深刻でした。事業を継続するためには、現場で汗を流す仲間が安全に働き続けられる土台を築かなければならない。この危機感が、同社の環境整備の原点となります。

健康経営へ本格的に舵を切ったのは2020年。当初は保険会社の提案がきっかけでしたが、現場の疲弊を前に経営陣の意識は急速に変化しました。過酷な環境にある社員を会社としてどう守るか。その決意は、手厚い支援体制へと結実します。全社員を対象とした人間ドック受診費用の全額補助をはじめ、インフルエンザワクチンや女性社員の婦人科系疾患の診断費用まで、会社が全面的に負担する仕組みを整え上げました。これは単なる待遇の拡充ではなく、共に働く仲間を決して置き去りにしないという力強いメッセージそのものだったのです。

現場特有の痛みにアプローチすべく、専門家を招いた週1回のストレッチ教室も開始しました。運搬作業で張り詰めた筋肉を丁寧にほぐす時間は、ドライバーたちから絶大な支持を集めています。また、天童市の健康増進事業に参画し、歩数を競う専用アプリを導入。地元の旅館宿泊券や高級肉といったインセンティブを抽選で用意されており、社員が楽しみながら運動不足を解消できる仕掛けとなっています。

こうした土壌づくりの成果は、社員の自発的なアクションとして芽吹いています。冬場の運動不足に対し、有志による運動報告のLINEグループが立ち上がりました。「サッカーをした」「ダンスをした」という報告が共有され、部署の垣根を越えた温かなコミュニケーションの場として機能しています。長く勤める仲間の心身を真摯に守り抜く同社の歩みは、地域企業における組織づくりの最適解を静かに提示しています。株式会社さのや:https://sanoya3083.com/

まとめ

今回ご紹介した3社は、置かれている環境も直面している課題も全く異なります。しかし、根底に流れる哲学は驚くほど共通していました。それは、現場で汗を流す一人ひとりの顔を思い浮かべ、彼らが抱える痛みや孤独をどうにかして和らげたいという、経営陣の静かな執念です。

形ばかりの福利厚生を充実させることに、大きな意味はありません。大切なのは、現場のリアルな声に耳を澄まし、不器用であっても真摯に手を差し伸べ続けることです。最初から完璧な制度を用意する必要はありません。

まずは、目の前の社員の日常に思いを馳せることから始めてみてください。その小さな気づきと一歩が、いずれ組織全体を包み込む確かな信頼へと育っていくはずです。

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