2026.5.19

健康経営

制度の拡充ではなく“体温”を感じる組織づくり──中小企業に学ぶ、真の健康経営と従業員へのまなざし

健康経営

人材定着や働きがい向上という果てしない課題に対し、どこから手をつけるべきかと思い悩む経営者や人事担当者は少なくありません。しかし、表面的な制度の導入や流行の福利厚生をなぞるだけでは、組織の根本的な課題解決には至らないのが現実です。業種も規模も異なる企業が試行錯誤の末にたどり着いたのは、働く人々の人生そのものに正面から向き合う、泥臭くも温かい姿勢でした。本稿では、独自のカルチャーと環境整備を築き上げた中小企業3社のリアルをご紹介し、人を大切にする職場づくりの本質的なヒントをひもときます。

■ 地域の歓声が社員の誇りを育む──株式会社ヨシザワ

パッケージ製造などを手掛け、三重県鈴鹿市の地域社会と密接に関わりながら事業を展開する株式会社ヨシザワ。平均年齢37歳、男性150名・女性70名という活気に満ちた組織を根底で支えているのは、新社長の就任を機に一層強化されたトップからの積極的なメッセージ発信と、従業員一人ひとりの声に耳を傾ける真摯な姿勢です。その取り組みの中心で旗振り役を担うのは、統括本部本部長として総務人事部門を力強く牽引する澤谷賢二氏です。

同社を象徴するユニークで熱気を帯びたカルチャーとして、5年前から本格的に始動したソフトテニスの実業団活動が挙げられます。現在14名の社員が所属し、日々の業務と高いレベルの競技を両立させながら汗を流しています。地域に深く根付いた競技であるソフトテニスを通じ、社員たちは地元中学校への外部指導員としても活動の幅を大きく広げています。自社の社員が地域の子供たちに真剣にスポーツを教える姿は、社内外にポジティブな連鎖を生み出しているそうです。

また、同社が何よりも大切にしているのが、客観的なデータに基づく社内対話です。生命保険会社の協力を得て、エンゲージメントや仕事の満足度を測る20項目のアンケートを全社規模で定期的に実施しています。経営陣の感覚値に頼るのではなく、抽出されたリアルな結果を直視し、次なる施策の羅針盤としているのです。たとえば、身体的な健康づくりの一環として、毎年の恒例行事である運動会に加え、2025年には全社的な転倒予防教室の開催を予定しています。年齢を重ねても安全に働ける環境への細やかな配慮は、長く健やかに活躍してほしいという企業側の切実な願いの表れに他なりません。

優秀な人材を継続的に確保し、定着してもらうためには、休日数や福利厚生の面で大企業に引けを取らない水準を目指す必要がある──。そんな力強い覚悟を胸に、同社は今日も労働環境の整備に邁進しています。制度を整えること自体が目的ではなく、その先にある従業員の笑顔と安心を守り抜くために、地域と連携しながら独自の進化を続けているのです。

株式会社ヨシザワ:
URL:https://www.yoshipack.co.jp/kenkokeiei/

■ 悲しみを越え、物心両面の幸福を追求する──株式会社エムテートリマツ

新潟県燕市に拠点を構え、業務用厨房用品の総合商社として確固たる地位を築く株式会社エムテートリマツ。創業から89年という長い歴史を持つ同社ですが、その歩みは決して平坦なものばかりではありませんでした。現在、経営管理を担う笹川氏と鳥部社長のタッグのもとで進められている健康経営の根底には、過去に40代女性と50代男性の女性社員を病気で亡くしたという、深く胸に刻まれた痛切な経験が存在します。平均年齢約40歳、男女比がほぼ半々という組織において、シニア世代の増加やメンタルヘルスの不調(過去に4名がうつ病を経験し、現在は無事に職場復帰)といった課題に直面する中、同社は「顧客満足よりも先に、まずは社員満足を高める」という経営方針を打ち立てました。

具体的な施策として、毎日のラジオ体操や血圧測定の習慣化に加え、専門の講師を招いた体操教室を意欲的に導入しています。特にこの体操教室は女性社員からの反響が大きく、日々の疲労回復や業務への活力向上に大きく貢献しているといいます。もちろん、すべての取り組みが最初から順風満帆だったわけではありません。過去には燕市が提供する健康推進アプリを導入したものの、社内への定着が進まず、運用が頓挫したという苦い挫折も味わいました。しかし、そうした失敗を隠すことなく受け入れ、次なる一手へと柔軟に方針を転換できる適応力こそが、同社の本当の強みでもあります。

同社の組織運営の軸にあるのは、2019年までの10年間にわたり盛和塾で深く学んだ、従業員の物心両面の幸福を追求するという確固たるフィロソフィです。アメーバ経営を取り入れ、京セラからのコンサルティングも受けながら、「売上最大、経費最小、時間最短」というシビアな目標に向き合っています。しかし、その厳しさは決して社員を縛るものではなく、覚悟と勇気を持って経営の責任を全うするための基盤づくりに他なりません。決算手当の拡充など経済的な豊かさである「物」と、体操教室などの健康支援である「心」の両輪を回しながら、来る創業100周年に向けた売上100億円という壮大なビジョンを見据えています。全員を満足させることの難しさを痛感しつつも、目の前の当たり前を実直に積み重ねるその姿勢は、多くの悩める企業の道しるべとなるはずです。

株式会社エムテートリマツ:
URL:https://www.mt-torimatsu.co.jp/

■ トップの切実な願いが、社内の空気を変える──株式会社八興

測量事業などを中心に展開する栃木県宇都宮市に所在地を置く株式会社八興。平均年齢46歳、男性13名・女性7名という少数精鋭のプロフェッショナル集団を支えているのは、経営トップの強烈なリーダーシップと、それに呼応して奔走する現場担当者の二人三脚の歩みです。同社の健康経営は当初、社長がたった一人で手探りの状態からスタートさせました。その後、2022年からは総務部の菅原氏が専任担当者としてバトンを受け継ぎ、保険会社からの勧めをきっかけに本格的な制度構築へと舵を切りました。驚くべきことに、認証取得に向けたプロセスを進める中で、同社がすでに日常的に行っていた数々の細やかな取り組みが、そのまま認証基準を十分に満たしていたといいます。初年度には健康経営アドバイザーの資格も速やかに取得し、組織としての知見を急速に深めていきました。

独自の取り組みの根底には、過去にがんを患った社員を間近で目の当たりにした社長の、痛切なまでの「大切な社員を守りたい」という強い想いがあります。その想いは、同社のユニークな休暇制度に色濃く反映されています。健康診断の結果、再検査が必要となった社員には、受診のための特別休暇を1日分付与し、早期発見・早期治療を後押ししています。さらに素晴らしいのは、再検査が不要だった健康な社員に対しても「健康を維持してくれたことへの感謝」として、1日分の有給休暇をプレゼントしている点です。こうした制度の存在は、単なる福利厚生の枠を超え、会社が社員の命と生活を本気で案じているという強力なメッセージとして社内に深く浸透しています。

また、社長の肝いり施策として、社内の使われていなかった空間を「リフレッシュルーム」へと大胆に生まれ変わらせました。室内にはエアロバイクやバランスボール、高性能なマッサージチェアを完備し、就業時間中に1日30分まで自由に休息を取ることが会社として認められています。さらに、社員同士の偶発的なコミュニケーションを促進するサントリーの「社長のおごり自販機」もいち早く導入し、物理的な働く環境の整備にも一切の妥協がありません。

毎年の全社アンケートにおいて、「社長が社員の健康づくりに熱心だと思いますか」という設問への肯定的な回答は、初期の75%から見事100%へと跳ね上がりました。情報発信による社内での認知は着実に進んでいるものの、個人の根本的な行動変容に至るまでにはまだ壁があると菅原氏は冷静に分析しています。しかし、トップの深い愛情と担当者の地道な啓発活動は、確実に社内の空気を温かく包み込み、次なる成長の種を静かに蒔き続けているのです。

株式会社八興:
URL:https://www.hakko-jpn.com

まとめ

今回ご紹介した3社に共通しているのは、決して潤沢な予算や最初から完璧に設計された制度があったわけではない、という事実です。ある企業は大切な社員との別れを経験し、またある企業は社員の病気を目の当たりにしたことで、「目の前にいる仲間を守りたい」という切実な想いを抱きました。その純粋な願いこそが、すべての取り組みの起点となっています。

「他社がやっているから」「流行しているから」という理由で導入された制度は、いずれ形骸化してしまいます。しかし、経営者や人事担当者の“体温”がこもった施策は、たとえ不格好であったとしても、必ず従業員の心に届くはずです。

最初から完璧なロードマップを描く必要はありません。まずは、いま目の前で働いている従業員の顔を思い浮かべ、小さな対話を始めること。そこから生まれる試行錯誤の泥臭いプロセスこそが、自社にしか創り出せない「本物の働く環境」へと繋がっていくはずです。

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