2026.6.8
健康経営「異常なし」なのに腰が痛い?画像検査では分からない腰痛の正体
デスクワーク中心の現代では、腰痛は多くの働く世代を悩ませる代表的な不調の一つです。
そんな中で、
「腰がかなり痛くて病院に行ったものの、レントゲンやMRIでは『異常なし』と言われた」
「MRIでヘルニアが見つかったが、そもそもヘルニアの原因は何かわからない」
このような疑問や不安を抱えている方も少なくありません。
特に、ヘルニアという言葉を聞くと、
「かなり重度の状態なのではないか」
「このままずっと治らないのではないか」
と不安になってしまう方も多いでしょう。
しかし実は、「画像上の異常」と「実際の痛み」は必ずしも一致するとは限りません。反対に、画像検査では異常が見つからなくても、腰痛が続いているケースも数多く存在します。
今回は、身体の専門家である理学療法士の視点から、「画像検査では分からない腰痛の正体」について解説します。
目次
① 画像所見と実際の症状の意外な関係
実は、「画像上の異常」と「実際の痛み」は必ずしも一致しないことがわかってきています。

Bodenら(1990年)の研究によると、「これまで腰痛を経験したことのない健康な67名」を対象に腰椎MRIを撮影したところ、60歳以上において、
- ◉椎間板ヘルニア 36%
- ◉脊柱管狭窄 21%
という所見が認められました。
さらに、椎間板の変性や膨隆に至っては、60〜80歳でほぼ全例にみられたと報告されています。1)
つまり、画像上の変化は、年齢を重ねることで自然にみられる変化である場合が多く、それが実際に痛みを引き起こしていないことも多くあります。
もちろん、画像所見が実際の痛みと関連しているケースもありますが、「画像に異常がある=それが痛みの原因」とは限らないという認識は、意外と一般的には知られていないと思います。
「画像に異常があるから痛い」と考えるのは当然のことだと思いますが、痛みの原因と画像所見は必ずしも直結するわけではなく、「画像に映らない腰痛」も多く存在するのです。
② 画像診断に映らない「4つの腰痛」
では、画像に異常がない場合は、何が痛みを引き起こしているのでしょうか。
まず、腰痛という大きな括りにおいては、「特異的腰痛」と「非特異的腰痛」の2種類に分類されます。
特異的腰痛と非特異的腰痛
特異的腰痛とは、MRIやレントゲンなどの画像検査等によって、痛みの原因となる明確な異常が確認できる腰痛のことです。
特異的腰痛の代表的なものとして、
- ◉椎間板ヘルニア
- ◉脊柱管狭窄症
- ◉腰椎圧迫骨折
- ◉感染性脊椎炎
- ◉がん,腫瘍
- ◉内科的疾患
などが挙げられます。
これらは腰痛全体の約15%程度とされております。
一方で、特異的腰痛を除く残りの約85%は「非特異的腰痛」と呼ばれています。
「非特異的腰痛」は、レントゲンやMRIだけでは痛みの原因を明確に特定できない腰痛です。
そのため、「非特異的腰痛」の場合は、実際に整形外科でも「異常なし」と言われてしまうケースも少なくありません。
それでは、非特異的腰痛の4つについて特徴を紹介します。
椎間関節性腰痛
腰椎の間にある「椎間関節」に負荷がかかることで生じる腰痛です。
体幹の伸展(反らす)、回旋(捻る)、側屈(横に倒す)、かがんだところからの起き上がり動作で鋭い痛みが出現しやすい特徴があります。
スポーツ等の繰り返しの動作や、長時間の立位によって痛みが強くなるケースがあります。

仙腸関節性腰痛
仙骨と腸骨の間にある「仙腸関節」にストレスがかかることで生じる腰痛です。
殿部や下肢に痛みを伴うことも多く、長時間の立位や座位、体幹の運動、股関節の動きによって痛みが誘発されます。
下肢の痛みを伴うため、腰椎椎間板ヘルニア等と症状が似ているため、鑑別が必要になることがあります。

椎間板性腰痛
背骨と背骨の間でクッションの役割を果たしている「椎間板」そのものが傷むことで起こる腰痛です。
ただ、一般的によく聞く「椎間板ヘルニア」とは異なります。
椎間板ヘルニアは、椎間板の中身が飛び出して神経を圧迫し、足にしびれや痛みを引き起こします。
一方、椎間板性腰痛では、神経症状よりも「腰そのもの」に強い痛みが出ることが特徴です。
中腰での作業、重い物を持ち上げる動作、咳・くしゃみ、長時間の座位、スポーツ活動などで痛みが出現しやすく、特にデスクワーク中心の方では慢性化しやすい傾向があります。

筋・筋膜性腰痛
「筋肉や筋膜」が原因で生じる腰痛です。
筋や筋膜は腰背部全体を覆っていて、かつ殿部や背中の筋肉とも連結しているため、痛みの部位も腰だけでなく、広い範囲で生じることがあります。
長時間のデスクワークなど同じ姿勢での作業、前屈みの作業、スポーツ動作など、筋肉に負担のかかる状態が続くことで、筋や筋膜に微細損傷や炎症が起こったり、血流が低下することで発症すると考えられています。
「マッサージで一時的に楽になる」といった特徴を訴える方も、筋・筋膜性腰痛であることが多いです。

以上、4つの腰痛を紹介しましたが、実際の現場では、これらが単独で存在するだけでなく、複数の要因が重なり合うことで痛みを引き起こしているケースも多くみられるため、専門家によるチェックが必要となります。
特に長時間のデスクワークや運動不足によって身体機能が低下している場合、複数の要因が重なって腰痛を引き起こしていることも少なくありません。
③ これがあったら要注意「レッドフラッグ」のサイン
腰痛の多くは非特異的腰痛ですが、腰痛の中には早急な医療対応が必要な「レッドフラッグ」というサインが存在します。

以下の症状がある場合は、自己判断せず、速やかに医療機関を受診することが重要です。
- ◉何もしていなくても強く痛む
- ◉夜間痛が強く眠れない
- ◉発熱を伴う
- ◉転倒や外傷後から強い痛みが続いている
- ◉足の強いしびれや筋力低下がある
- ◉排尿,排便障害がある
- ◉会陰部(股間周辺)の感覚障害がある
これらは、
- ◉重度の神経障害
- ◉骨折
- ◉感染症
- ◉腫瘍
などによる腰痛の可能性があります。
まずは「危険な腰痛ではないか」を確認することが、非常に重要になります。
④ 画像では分からない「身体機能の問題」に目を向ける
ここまで、「特異的腰痛」と「非特異的腰痛」について説明してきましたが、まず大前提として重要なことがあります。
それは、医師による診察や画像検査を受け、
「骨折や重度のヘルニア、感染症、腫瘍などの重大な病気が隠れていないこと」
を確認することです。
腰痛の中には、早急な治療が必要な病気が隠れている場合もあるため、
「画像に異常がない」という評価そのものが非常に重要な意味を持ちます。
その一方で、画像検査では大きな異常が見つからなかったにもかかわらず、腰痛が続いている方も少なくありません。
そのような場合には、画像には映らない「身体機能の問題」に目を向ける必要があります。

- ◉股関節の動きが悪く腰に負担が集中している
- ◉体幹の筋力低下によって腰を支えられていない
- ◉姿勢や動作の癖によって特定の組織へ負荷がかかっている
- ◉柔軟性の低下によって腰が過剰に働いている
など、腰痛の背景にはさまざまな機能的要因が存在します。
同じ「前かがみで痛い腰痛」であっても、その原因は人によって全く異なります。
そのため、症状だけで判断して自己流のストレッチやマッサージを続けても、なかなか改善しないケースもあります。
このような場合には、理学療法士など身体機能の評価を専門とするスタッフが在籍する整形外科クリニックを受診することも一つの選択肢です。
理学療法士は、関節の動きや筋力、姿勢、歩行、身体の使い方などを評価し、「なぜ腰に負担が集中しているのか」を分析することを得意としています。
画像検査では分からない身体機能の問題を明らかにすることで、痛みの改善につながるヒントが見つかることも少なくありません。
画像で異常がないと言われたからといって、「原因がない」「治らない」というわけではありません。
画像に映らない身体機能の問題に目を向けることが、腰痛改善への第一歩になる場合もあるのです。
⑤ まとめ
MRIやレントゲンの画像所見は、身体の状態を把握するための重要な情報の一つです。
しかし、ヘルニアなどの所見が見つかったからといって、それが必ずしも現在の痛みの原因とは限りません。
実際には、腰痛の約85%が画像検査だけでは原因を特定できない「非特異的腰痛」とされており、関節や筋肉、姿勢、身体の使い方などの機能的な問題が関与しているケースも少なくありません。
まずは医師による診察を受け、重大な疾患が隠れていないことを確認することが大切です。その上で、症状が続く場合には、理学療法士などによる身体機能の評価を受けることで、改善の糸口が見つかることもあります。
弊社では、理学療法士などの専門家が企業へ訪問し、身体機能チェックや運動指導を通じて、従業員の身体機能の維持・向上や腰痛予防をサポートしています。
腰痛は個人の問題と思われがちですが、集中力の低下や欠勤、生産性の低下につながることもあり、企業にとっても重要な健康課題の一つです。
従業員の健康づくりに取り組みたい企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
〈記事執筆〉

吉田 亮太郎
【保有資格・修了】
理学療法士
NSCA-CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
外来整形外科にて数多くのリハビリや運動指導に携わる。
またトレーナーとして、一般層から高校野球選手まで、幅広い層へのトレーニングやコンディショニングの提供を行なっている。
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