2026.6.3

健康経営

【健康診断では見えない】プレゼンティーイズム簡易チェック|企業の生産性低下サインとは

健康経営

「最近、社員の集中力が落ちている気がする」
「欠勤はしていないが、以前よりミスが増えている」
「体調不良を抱えながら働いている社員が多い」

このような職場の変化を感じたことはないでしょうか。

それは単なる個人の不調ではなく、プレゼンティーイズムと呼ばれる状態である可能性があります。プレゼンティーイズムとは、「健康の問題を抱えつつも、業務を行っている状態」を指します。
プレゼンティーイズムは、数値化しにくい課題であるため見過ごされやすい一方で、

  • ◉生産性低下
  • ◉ミスやトラブルの増加
  • ◉将来的な休職、離職リスク

といった形で、企業にとって大きな損失につながる可能性があります。

本記事では、

  • ◉プレゼンティーイズムの実態
  • ◉プレゼンティーイズム簡易チェック方法
  • ◉企業が取り組むべき対策

について解説します。

①プレゼンティーイズムとは

「プレゼンティーイズム」は、体調不良を理由に欠勤しているわけではないため、一見すると問題がないように見えます。
しかし実際には、集中力・判断力・作業効率などが低下し、業務成果に影響しているケースが少なくありません。

欠勤との違い

健康経営の分野では、仕事を休業している状態(欠勤や休職)「アブセンティーイズム」と呼びます。

  • アブセンティーイズム:仕事を休業している状態
  • プレゼンティーイズム:健康の問題を抱えつつも、業務を行っている状態

「アブセンティーイズム」は目に見える問題であり把握しやすい一方、「プレゼンティーイズム」は表面化しにくく、対策が遅れやすい点が特徴です。

「アブセンティーイズム」の社員が多い状態は、目に見えにくいものの、企業全体の生産性を静かに低下させる要因となります。

②実は欠勤より損失が大きい

企業における健康関連コストというと、「アブセンティーイズム」(欠勤・休職)を想像されることが多いかもしれません。

しかし近年では、「アブセンティーイズム」よりも「プレゼンティーイズム」による損失の方が大きいと指摘されています。

日本における労働者の生産性のコストを可視化した研究(Nagata,2018)によると、企業における従業員の健康問題に関わるコストのうち、「プレゼンティーイズム」は全体の64%を占めると報告されています。

対して「アブセンティーイズム(欠勤)」のコストは全体の11%とされており、「プレゼンティーイズム」の方が大きな損失を生み出していることがわかります。

つまり、企業にとっては「欠勤者への対応」だけでなく、「出勤している社員のパフォーマンス低下」に対する対策が不可欠となっています。

③なぜ企業は気づけないのか

プレゼンティーイズムが問題なのは、企業側が把握しにくい点にあります。

健康診断では見えない

労働安全衛生法第66条に基づき、企業は労働者に対して、医師による健康診断を実施することが義務付けられています。

健康診断では、

  • ◉血圧
  • ◉血液検査
  • ◉内科的異常所見

などは確認できます。

一方で、

  • ◉慢性的な疲労感
  • ◉姿勢不良による身体負担
  • ◉肩こり・腰痛・膝痛
  • ◉集中力低下
  • ◉身体機能の低下

といった、仕事の生産性に直結するものの、数値化しにくい問題は見えにくいのが現実です。

本人も自覚しにくい

不調が徐々に進行する場合、本人も

「年齢のせいだろう」
「忙しい時期だから仕方ない」と考え、

対策を取らずに無理やり働き続けてしまうことがあります。

個人の問題として処理されやすい

本来は職場環境や働き方に起因しているケースでも、

「本人の体調管理の問題」
「自己管理不足」として処理されてしまうことがあります。

しかし実際には、個人の問題として処理せず、企業全体で対策すべき組織課題といえます。

④プレゼンティーイズムは測定できる

プレゼンティーイズムは見えにくい課題ですが、把握できないわけではありません。近年では、アンケート形式の評価指標を用いて、

  • ◉疲労度
  • ◉集中力低下の頻度
  • ◉業務効率の低下実感
  • ◉健康問題による仕事への影響度

などを可視化する取り組みが進んでいます。

代表的な評価方法として、

  • ◉WHO-HPQ(世界保健機関(WHO)が開発した世界標準の指標)
  • ◉WLQ(タフツ大学で開発された、より「具体的な業務への支障」を測る指標)
  • ◉WPAI(特定の疾患が仕事や日常生活にどれだけ影響を与えたかを測るのに適した指標)

などがあります。

これらを活用することで、これまで感覚的だった「生産性低下」を定量的に把握することが可能になります。

ただし、まず企業として取り組むべき第一歩は、専門的な指標の導入よりも、現場の状態を把握する簡易チェックから始めることが重要です。

⑤あなたの会社は大丈夫?簡易チェック5項目

過去1週間〜1ヶ月を振り返って、以下の項目に当てはまるかチェックしてみましょう。
※管理職・人事担当者の方は、部署単位での傾向把握にも活用できます。

4つ以上当てはまる場合は、職場内でプレゼンティーイズムが発生している可能性があります。

プレゼンティーイズム簡易チェック5項目

1 【身体の余裕】
腰痛、頭痛、眼精疲労、あるいは強い寝不足などで、椅子に座り続けるのがしんどいと感じることがある。

2 【心の集中力】
不安や気分の落ち込み、イライラがあり、仕事中にふと手が止まってしまう時間がある。

3 【仕事のスピード(量)】
体調が万全な時なら1時間で終わるはずの作業に、1.5倍〜2倍近い時間がかかっている。

4 【仕事の正確性(質)】
普段ならしないようなケアレスミス(誤字脱字、連絡漏れなど)が増えている、またはクオリティに納得がいかない。

5 【対人・調整】
会議での発言や、チームメイトとの細かな相談を「億劫だ」「面倒だ」と感じて避けてしまう。

判定目安

【0〜1個】:健康状態は良好
【2〜3個】:プレゼンティーイズム予備群の可能性あり
【4個以上】:要注意。休息や受診、業務量の調整を検討するタイミングです。

⑥プレゼンティーイズムの主な要因と企業ができる対策

プレゼンティーイズムの原因は、単一の要因では説明できるものではありません。

近年の研究では、

  • ◉身体状態(肩こり・腰痛・膝痛など)
  • ◉心理状態(抑うつ・不安など)
  • ◉従業員エンゲージメント(従業員が企業に対して抱く多大な信頼度)
  • ◉職場環境
  • ◉職場ストレス
  • ◉睡眠の質

といった複数の要因が組み合わさることで生じるとされています。これらの要因は相互に影響し合うため、単一の施策だけで改善することは難しく、複数の観点からのアプローチが必要となります。

各対策については、過去のコラムでも豊富に解説しております。
上記の要因で「これは思い当たるな」という項目がある方は、下記を参照してみてください。

<身体状態>

<心理状態>

<職場環境>

<従業員エンゲージメント>

⑦まとめ

プレゼンティーイズムは、

  • ◉健康診断では見えない
  • ◉しかし企業の生産性を低下させ、離職にも影響するリスクが大きい
  • ◉ただし、早期に対策することで改善可能

という、現代企業にとって重要な経営課題です。

プレゼンティーイズム対策は、「個人の体調管理の問題」ではなく、「企業の生産性を守るための経営施策」として位置づけることが重要です。

「最近、社員のパフォーマンス低下が気になる」
「健康診断では問題ないのに、生産性が落ちている」

このような課題をお持ちの企業様は、一度現状の身体機能や働き方を可視化することをおすすめします。

弊社では、理学療法士などの専門家が企業へ訪問し、身体機能チェックや運動指導、ヘルスリテラシーセミナーを通じて、プレゼンティーイズムの改善・予防をサポートしております。

ぜひお気軽にお問い合わせください。

〈記事執筆〉

吉田 亮太郎

【保有資格・修了】
理学療法士
NSCA-CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)

外来整形外科にて数多くのリハビリや運動指導に携わる。
またトレーナーとして、一般層から高校野球選手まで、幅広い層へのトレーニングやコンディショニングの提供を行なっている。

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