2026.4.25
健康経営 セルフケア【理学療法士が解説】膝の痛みを放置すると企業に何が起きるのか ― 変形性膝関節症と職場リスク
「最近、階段を避ける社員が増えた」
「立ち仕事の後、膝を気にする様子が見られる」
従業員のこのような様子を見かけたことはないでしょうか。
これらは単なる「加齢」や「疲労」ではなく、変形性膝関節症の初期にみられるサインである可能性があります。
膝の痛みは、内科疾患のように「健康診断」で発見される疾患ではないため、企業において優先度が低く扱われがちです。
しかし実際には、
- ◉どこまでが業務として扱う範囲なのか
- ◉個別配慮と特別扱いの線引き
- ◉管理職↔人事との連携や説明
といった形で、企業の生産性や人材定着にも影響を及ぼす可能性があります。
本記事では理学療法士の視点から、変形性膝関節症が職場にもたらすリスクと、企業としての予防策について解説します。
目次
①変形性膝関節症とは
変形性膝関節症は、変形性疾患(関節が変形する疾患)の中でも最も多い疾患と言われています。
主な症状としては、膝関節の軟骨がすり減り、炎症や変形が進行することで、痛み、腫れ、可動域の制限等の症状を引き起こします。

変形性膝関節症診療ガイドライン(2023)によると、日本では、約800万人が痛み・腫れ・可動域の制限といった何らかの膝の症状を有しており、X線学的な関節の変化は約2500万人に存在すると言われております。
変形性膝関節症の原因は?
原因としては様々あります。
主な原因としては、
- ◉加齢 (退行性変化・加齢に伴う骨の変性)
- ◉肥満 (体重量が増加するほど関節の負担が大きい)
があげられます。

その他、すでに罹患している疾患により、二次性に発生する場合もあります。主には下記のような疾患があげられます。
- ◉外傷 (半月板損傷・骨折・靭帯損傷 等)
- ◉関節炎 (関節リウマチ 等)
特に50歳以上の肥満女性に多くみられることが特徴です。
理学療法士の臨床現場では、痛みが出る以前から「動作の癖」や「筋力バランスの崩れ」がみられるケースも多く、早期段階での予防・発見が重要とされています。
変形性膝関節症の初期に起こりやすい症状とは?
変形性膝関節症では、次のような症状から始まるケースが多くみられます。
- 【変形性膝関節症の初期に起こりやすい症状】
- ◉動き始めの膝のこわばり
- ◉膝の曲げ伸ばしがしづらい
- ◉最後まで曲がらない・伸びきらない感覚

このような違和感を感じたら、なるべく早く専門家にみてもらう必要があります。
ですが、違和感程度の場合、痛みが常にあるわけではないため、医療機関を受診しないまま進行してしまうことも少なくありません。
変形が進行すると日常生活も困難になる
症状が進行すると、階段昇降・長時間歩行・立ち上がり動作などが困難になり、日常生活だけでなく就労継続にも大きな影響を及ぼします。

②実は働く世代でも増えている変形性膝関節症
変形性膝関節症は高齢者の疾患というイメージがありますが、実際には生産年齢層でも一定割合で存在します。
高齢者だけでなく、生産年齢層でも多い
2005年より実施された大規模疫学研究「ROAD研究(Research on Osteoarthritis Against Disability)」では、年代別・男女別の有病率が報告されています。

生産世代の40-60代女性に多くの有病者がみられ、企業で中核を担う世代にも変形性膝関節症が広く存在していることが分かります。
立ち仕事・座り仕事 双方で発生する可能性がある
変形性膝関節症は特定の職種だけの問題ではありません。
立ち仕事・座り仕事、それぞれ下記のような原因が疾患に繋がります。
- 【立ち仕事等の重労働現場でのリスク】
- ◉長時間立位による関節負荷増大
- ◉重量物把持による、体重以上の関節負荷の連続

- 【座り仕事等のデスクワークメインの職場でのリスク】
- ◉長時間座位による筋力低下
- ◉運動不足による関節支持性の低下

このように、どのような職種・企業においても、変形性膝関節症のリスクがあることがわかります。
③変形性膝関節症が企業にもたらす3つの損失
日常生活に支障をきたすだけでなく、変形性膝関節症が進行すると、企業活動に以下のような形で影響します。
欠勤・休職リスク
変形性膝関節症が進行すると、痛みや歩行障害により、従業員の欠勤リスクが大きくなります。
また、進行が進むと、人工膝関節の手術が必要な場合があります。
その結果、手術による長期休職、そのまま退職というリスクも十分に考えられます。
特に、企業で中核を担う女性社員の離職要因にもなるため、対策が必要となります。
プレゼンティーイズム
プレゼンティーイズムとは、「健康の問題を抱えつつも仕事(業務)を行っている状態」を表す言葉です。
たとえ出勤していても、
- ◉社内移動や外出を避けるようになる
- ◉痛みによる集中力低下がみられる
- ◉連続勤務困難になる
このように生産性が低下します。
業務配置制限
現場業務・外回り営業・立位作業・重労働などが困難になり、人員配置に制限が生じます。
④企業ができる「変形性膝関節症」予防施策
変形性膝関節症は、進行後の治療よりも、早期段階での介入が効果的です。
鍵となるのが「医療機関」だけではなく、日常の大半を過ごす「職場環境」です。
医療機関だけでは解決しない理由
膝関節への負担は、スポーツ等の特別な動作はもちろんですが、日常動作や職務動作の積み重ねによっても生じます。
実際の企業現場では、次のような要因が多く見られます。
- ◉長時間座位による下肢筋力の低下
- ◉立ち上がり・歩行動作の癖による関節負荷増加
- ◉身体機能に対して過剰な業務負荷(重量物の持ち運び等)
- ◉運動機会の不足による関節支持性の低下
これらは医療機関では把握しづらく、働き方そのものを評価しなければ改善できない要素です。
膝の痛みが出た場合、多くの場合、整形外科を受診し、薬物療法、注射治療、リハビリテーション等を受けます。
しかし、症状の再発を左右する最大の要因は、治療時間以外、つまり職場での過ごし方にあります。
職場環境が変わらない限り、
一時的に改善 → 業務で再負荷 → 再発
というサイクルが繰り返されてしまいます。
だからこそ、企業側の予防的アプローチが重要になります。
企業が取り組める具体的施策①【身体機能チェック】
健康診断では、血液検査や内科的所見は把握できますが、次のような運動機能は評価されません。
- ◉関節可動域
- ◉筋力バランス
- ◉姿勢や動作の特徴や身体の負担
理学療法士による身体機能チェックを行うことで、
- ◉膝への負担が大きい動作習慣
- ◉将来的な痛み発生リスク
- ◉業務内容と身体機能のミスマッチ
を早期に把握が出来ます。

企業が取り組める具体的施策②【個別運動指導】
変形性膝関節症の予防において、運動療法は強く推奨されています。
しかし企業現場では、
- ◉年齢
- ◉体力レベル
- ◉業務内容
- ◉現病歴や既往歴膝への負担が大きい動作習慣
が大きく異なり、従業員一律の運動や動画配信だけでは十分な効果が得られないケースも少なくありません。
理学療法士による個別運動指導では、
- ◉姿勢や動作の特徴に応じた、膝に負担をかけない動作方法
- ◉業務中に実践できる運動
を提案できるため、無理なく継続しやすい点が特徴です。

⑤まとめ
企業における健康施策は、「不調が発生してから対応する」のではなく、「業務に支障が出る前」から予防的に介入することが重要です。
そのため、医療と職場環境の双方を理解した専門家による介入が、企業における実効性の高い対策となります。
変形性膝関節症は、
- ◉健康診断ではわからない
- ◉しかし企業生産性や離職率には確実に影響する
という、企業にとって見過ごせない課題です。
理学療法士などの専門家が関与することで「予防」の段階で対策が可能となります。
従業員の健康を守ることは、結果として企業全体のパフォーマンスを維持することにつながります。
弊社では、理学療法士などの専門家が出張し、社員様の身体状況をチェックした上で、安全かつ効果的な運動習慣をオフィスに定着させるためのサービス(ヘルスリテラシーセミナー、グループセッションなど)を提供しております。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
〈記事執筆〉

吉田 亮太郎
【保有資格・修了】
理学療法士
NSCA-CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
外来整形外科にて数多くのリハビリや運動指導に携わる。
またトレーナーとして、一般層から高校野球選手まで、幅広い層へのトレーニングやコンディショニングの提供を行なっている。
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