2026.8.10
セルフケア「真っ直ぐ伸びた背筋」は危険信号?見た目の良い「フラットバック姿勢」の落とし穴
皆様は、これまでの人生の中で「良い姿勢」を意識したことはありますでしょうか。
おそらくほとんどの方が、学校の先生や親御さんから「良い姿勢をしなさい」と言われた記憶をお持ちかと思います。一方で、「本当に良い姿勢とはどんな姿勢なのか」を正しく理解している方は、意外と少ないのではないでしょうか。
よくある一般的なイメージとして、
- 「背骨が曲がらず、一直線に伸びているのが最も良い姿勢」
- 「良い姿勢=背筋が真っ直ぐな状態」
このように思われている方は、多くいらっしゃいます。
ところが、こうした「良い姿勢」を日々意識している方の中に、
「良い姿勢をするよう常に気をつけているのに、なぜか首や腰が痛くなる」
という状態に陥っている方がいることも、また事実です。
なぜ、良い姿勢を取っているつもりなのに、痛みが出てしまうのでしょうか。そもそも、背筋が真っ直ぐな状態は、本当に「良い姿勢」と言えるのでしょうか。
本記事では、これらの疑問を掘り下げながら、見た目は良さそうに見えて実は注意が必要な「フラットバック姿勢」について解説していきます。
①背骨は「真っ直ぐ」が正解ではない -生理的弯曲というS字カーブ-
まず、姿勢の中心となる脊柱(背骨)の形状から考えてみましょう。
人間の背骨を横から見たとき、正常な姿勢においては、真っ直ぐな棒状ではなく、緩やかなS字を描いています。これを「生理的弯曲(せいりてきわんきょく)」と呼びます。

つまり、正常とされる背骨は、そもそも一直線ではないのです。
では、なぜ背骨はわざわざS字にカーブしているのでしょうか。
生理的弯曲の最大の役割は、姿勢を保つときや身体を動かすときに生じる衝撃を、分散・吸収することです。イメージとしては「バネ」を思い浮かべると分かりやすいと思います。S字カーブがあることで、背骨はバネのように働き、身体に加わる衝撃を上手く逃がしてくれます。
仮に、この生理的弯曲がなかったらどうなるでしょうか。
S字カーブがない=バネがないということなので、姿勢を保つためにより多くの筋力を使わなければならなくなります。さらに、日常の些細な衝撃さえも逃がすことができず、背骨の間にある椎間板や関節、筋肉に直接ストレスがかかってしまいます。
このほかにも、背中側に膨らむカーブ(胸椎や仙尾椎の後弯)には、肺や内臓を収めるための空間を身体の中に作り出すという役割もあります。S字カーブは、私たちの身体にとって欠かせない構造なのです。
②一見すると良い姿勢に見える 「フラットバック姿勢」
米国の理学療法士であるKendall(ケンダル)は、人間の姿勢を大きく4つのタイプに分類できると述べています。1)
- ◉ロードシス(前弯型)
- ◉カイホロードシス(後弯-前弯型)
- ◉スウェイバック(後弯-平坦型)
- ◉フラットバック(平背型)

このうち、冒頭で触れた「背骨が一直線に近い姿勢」に当てはまるのが、フラットバック姿勢です。
フラットバック姿勢とは、本来あるべき生理的弯曲が失われ、背骨が棒のように真っ直ぐになってしまっている状態を指します。
背骨がスッと伸びているため、「姿勢が良い人」に見えます。
ですが、先述したように、S字カーブが失われているということは、先ほどの「バネ」の機能が働きにくくなっている、ということになります。
③フラットバック姿勢は何が問題となるのか
一見すると良い姿勢に見えるフラットバック姿勢ですが、具体的にどのような問題が起こりうるのでしょうか。代表的なものを2つご紹介します。
折れ曲がりポイントにて首や腰の痛みが生じやすい
フラットバック姿勢では、真っ直ぐ(平坦)になっているのは主に「腰椎」と「胸椎の下部」です。

この真っ直ぐなラインに対して、頭の位置は前方に出やすいため、「胸椎の上部」がちょうど折れ曲がりポイントになります。折れ曲がりポイントには大きなストレスが集中しやすく、その周囲にある首の筋肉等は痛みを感じやすくなります。
また、胸椎下部から腰椎にかけてはS字カーブによる衝撃吸収がほとんど働きません。そのため、頭の重さが真っ直ぐ腰に降りかかってくる状態になります。結果として、腰の痛みや、椎間板へのストレスによる不調が生じやすくなるのです。
「良い姿勢を意識しているのに首や腰が痛い」という方は、このフラットバック姿勢に陥っているケースが少なくありません。
呼吸おける問題が生じる
フラットバック姿勢では、呼吸にも影響が出ます。
胸椎が平坦になっていると、胸郭(肋骨で囲まれたカゴ状の部分)を十分に広げられず、肺が膨らみにくくなります。
その結果、呼吸が浅くなったり、胸郭が上手く動かない分を補おうとして首や肩の筋肉を過剰に使って呼吸してしまう、といったことが起こります。
これが慢性的な肩こりや首の張りにつながることもあります。
④フラットバック姿勢になりやすい人・硬くなりやすい筋肉
では、どのような方がフラットバック姿勢になりやすいのでしょうか。次のような特徴を持つ方は注意が必要です。
- ◉座位・立位で、下を向いた作業が多い
- ◉常に緊張して姿勢を良くしようとし、背中の力が抜けていない
- ◉デスクワークが中心で、もも裏やお尻の筋肉が硬くなっている
「良い姿勢をキープしよう」と頑張り続けている方ほど、背中が常に緊張し、かえってフラットバック姿勢になってしまうことが多くあります。
また、フラットバック姿勢では、次のような筋肉が硬くなりやすい傾向があります。
- ◉ハムストリングス(もも裏)
- ◉大殿筋(お尻)
- ◉菱形筋、広背筋(背骨まわりの筋肉)

こうした硬さに対して、ストレッチで柔軟性を取り戻していくことが非常に重要になります。
⑤フラットバック姿勢の人のための改善エクササイズ
最後に、フラットバック姿勢の改善に役立つエクササイズをご紹介します。
胸椎屈曲エクササイズ
- 【方法】
- ①椅子に座った状態で、両腕を前に伸ばし、手の甲は内側に向ける。
- ②息を吐きながら、頭部、背骨、骨盤すべてを丸める
- ※上記を繰り返す

Cat & Cow(猫と牛のポーズ)
- 【方法】
- 基本姿勢
- 手と膝を床につき、四つ這い姿勢をとる。手は肩の真下、膝は股関節の真下に置く。背骨はニュートラルな位置。
- Cat(猫のポーズ) 屈曲
- ①息を吐きながら、背中を天井方向に丸める。
- ②おへそを覗き込むように顎を引き、頭を下げる。
- ③坐骨を内側に巻き込むイメージで、骨盤を後傾させる。
- Cow(牛のポーズ) 伸展
- ①息を吸いながら、お腹を床に近づけるように背中を反らせる。
- ②胸を前方に開き、顎を軽く持ち上げて天井方向を見る。
- ③お尻を突き出すイメージで、骨盤を前傾させる。
※CatとCowを繰り返す。

ハムストリングスストレッチ
- 【方法】
- ①伸ばす側の膝を伸ばしてつま先を上に向ける。
- ②反対側の手で、つま先に向かって手を伸ばす。
- ③伸ばした側のつま先に触れていく。
- ◉外側に向けて親指を触るパターン(ハムストリングスの内側を伸ばす)
- ◉内側に向ける小指を触るパターン(ハムストリングスの外側を伸ばす)

- 【参考動画】
大殿筋ストレッチ
- 【方法】
- ①伸ばす側の足を、反対側のももの上に、膝を曲げて乗せる。
- ②骨盤と腰は丸まらないように立てる。
- ③おへそが、曲げた膝に近づくように身体を倒していく。

⑥まとめ
今回は、「良い姿勢」だと思われがちなフラットバック姿勢の落とし穴について解説しました。
「良い姿勢」とは、背筋をピンと真っ直ぐに伸ばすことではなく、身体本来のS字カーブを保ちながら立っている状態を指します。
日々「姿勢を良くしよう」と頑張っている方こそ、一度ご自身の背中の状態を見直してみてください。
とはいえ、ご自身の姿勢のクセや、身体のどこが硬くなっているのかを正確に把握するのは、なかなか難しいものです。特に、デスクワーク中心の職場では、社員の皆様が知らず知らずのうちに、不良姿勢に陥っているケースが多く見られます。
弊社では、企業様のオフィスに直接出張し、社員様お一人おひとりの身体の状態をチェックしたうえで、その方に合ったストレッチを提供し、身体的な不調の改善をサポートするサービスを行っております。
また、ヘルスリテラシー向上のためのセミナーやイベント、グループセッションなどのご提案も行っております。「社員の健康づくりに本格的に取り組みたい」「職場のパフォーマンスや働きやすさを高めたい」とお考えの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
〈参考文献〉
1)Kendall(1983),Muscles, testing and function with posture and pain
〈記事執筆〉

吉田 亮太郎
【保有資格・修了】
理学療法士
NSCA-CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
外来整形外科にて数多くのリハビリや運動指導に携わる。
またトレーナーとして、一般層から高校野球選手まで、幅広い層へのトレーニングやコンディショニングの提供を行なっている。
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