2026.9.28
セルフケアあなたのストレートネック、原因は首ではないかもしれません
「ストレートネック」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
近年、スマートフォンやパソコンの普及とともに広く知られるようになったこの言葉。「スマホの見すぎで首が真っ直ぐになってしまう状態」というイメージをお持ちの方が多いかと思います。

ところが、ストレートネックに悩む方の中には、
「スマホやパソコンの使用時間を減らしても首の痛みやこりが改善しない」
「マッサージに行っても、すぐに元に戻ってしまう」
という状態が続いているケースが少なくありません。
なぜ、原因を取り除いているはずなのに症状が改善しないのでしょうか。本記事では、理学療法士の立場から、ストレートネックのメカニズムと、本当に必要なアプローチについて解説します。
①ストレートネックとは何か?
まず、「ストレートネック」という言葉そのものを整理しておきましょう。
ストレートネックという呼称について
「ストレートネック」は日本で広く使われる呼称ですが、実は医学的に完全に統一された定義や診断名があるわけではありません。
一般には、正常であれば緩やかな前弯カーブ(前方へ凸となるカーブ)を描くはずの頸椎が、その前弯カーブを失い直線的になっている状態を意味します。

もう少し詳しくみていくと、頸椎の中でも、真ん中〜下部(頸椎7個中の上から3-7番目)の前弯が失われて真っ直ぐになっています。ただ、視線は前を見ようとするため、上部(頸椎7個中の上から1-2番目)だけは前弯となり、顎が上がってしまう姿勢となります。これが、一般的なストレートネックの状態です 1)。

このような状態が続くと、前に出た頭を支えるために首や肩甲骨周りの筋肉が緊張したり、場合によっては頭痛等につながることもあります。
ストレートネックは必ず矯正が必要なのか
ストレートネックと聞くと、「首の矯正をしてもらわないと治らないんじゃないか」と思われる方も多いかもしれません。
ここで重要なのは、「首が真っ直ぐ=必ず症状が出る」わけではないという点です。レントゲンやMRIでストレートネックと指摘されても、まったく自覚症状がない方も少なくありません。
画像所見と症状が必ずしも一致しないことは、以前の記事でもご紹介させて頂きました。
重要となってくるのは、「首が真っ直ぐかどうか」という形の問題だけにとらわれるのではなく、
- ◉痛みの有無
- ◉神経症状(手や腕のしびれ・痛みなど)
- ◉日常生活や仕事の中でどのような場面で症状が悪化するか
- ◉全体の姿勢の評価
を個別に把握することです。
「ストレートネックと言われた」という理由だけで、今すぐ矯正が必要だったり、不必要な画像検査を繰り返す必要は、基本的にはありません。
②ストレートネックと特異的疾患との関係
「ストレートネック=必ず症状が出る」わけではないことをお伝えしましたが、症状がある方にとって、ストレートネックを長期間放置することには注意が必要です。
頸椎のカーブが失われた状態、あるいは後方に弯曲した状態(後弯)では、椎間板への圧力が不均一になり、頸椎椎間板ヘルニアのリスクが高まることが研究で示されています。
40歳未満の、首の痛みを持つ患者300名を対象とした研究では、頸椎の前弯が失われているグループほど椎間板ヘルニアの程度が強く、頸椎のカーブ改善に伴ってヘルニアの程度も軽減したことが報告されています 2)。
ただし大切なのは、頸椎のカーブを無理に矯正することではなく、なぜその状態になっているのか、原因を考えることです。
次章では、ストレートネックの原因についてご紹介します。
③ストレートネックの原因を考える
「首そのもの」に原因があるケース
症状が出ている首そのものに、原因が潜んでいるケースが存在します。代表的なものとして、以下が挙げられます。
- ◉加齢に伴う頸椎の変性(椎間板の変性、関節の拘縮)
- ◉むち打ちなどの外傷をきっかけに、頸部の筋が固まっている
- ◉頸部のインナーマッスルの機能低下により、頭を支える役割が表層の筋に偏っている
こうしたケースでは、頸椎そのものへの評価とアプローチが直接必要になります。
ただし、実際の臨床現場では、首のみの治療をしても良くならないケースも多々見受けられます。
首は症状が現れている「現場」であっても、その負担を作り出している「原因」は別の場所にあることが多く存在します。その鍵を握るのが、次に説明する「FHP」です。
「首以外の部分」に原因があるケース
ストレートネックを考えるうえで、重要となるのが「FHP(Forward Head Posture:頭部前方位姿勢)」です。
FHPとは、本来であれば耳が肩の真上にあるべき頭の位置が、前方に突き出てしまっている状態を指します。これは日本でいう「ストレートネック」と深く関連しており、FHPが生じることで頸椎の前弯カーブが失われるケースが非常に多く見られます。
では、なぜ頭が前に出てしまうのでしょうか。ここで鍵を握るのが「胸椎」です。
ストレートネックを作り出す「頸椎」は、その下に続く胸椎・腰椎と連続した一本の柱として機能しています。デスクワークや前傾姿勢が長時間続き、胸回りの筋肉が硬くなることで、胸椎が過度に丸まった状態(胸椎後弯位)で固まってしまいます。

このように、ストレートネックは首のみの問題で引き起こされるわけではなく、胸椎を始めとした、首以外の部分からの影響を受けて起きることも多くあります。
さらに言うと、胸椎より下の部分である、骨盤帯や下半身の硬さが影響することも多々見受けられます。
現在、自分がどのような理由によりストレートネックを生じているのかを判別することが、ストレートネックの本質的な改善につながります。
④FHPが生じやすい人のチェックリストと改善エクササイズ
以下に当てはまる方は、FHPが生じやすい状態になっている可能性があります。
- ◉デスクワークが中心で、長時間同じ姿勢でいることが多い
- ◉ノートパソコンやスマホをよく使用しており、猫背・前傾姿勢になりやすい
- ◉首や肩のこりが慢性的に続いている
- ◉深呼吸をすると背中が張る感覚がある
- ◉横から写真を撮られると、顎が上がっていると感じる
こうした状態が積み重なることで、胸椎の硬さ→FHP→ストレートネックという流れが生まれていきます。
ここからは、実際に取り組んでいただけるエクササイズを2つご紹介します。
胸椎屈曲・伸展エクササイズ
- 【方法】
(可能なら背もたれ付きの)椅子に座り、頭の後ろで手を組む - ①首からではなく、胸から丸めるイメージで、胸椎を屈曲させる
- ②首からではなく、胸から反らすイメージで、胸椎を伸展させる(痛みがない場合は背もたれに胸椎をつけながら反らすのもgood)
- ※5-10回程度繰り返す

- 【注意点】
- ◉胸椎を主に動かすため、首を強く動かさないように注意。
- ◉首の痛みや腕のしびれが強い方は実施しない。エクササイズをやっていて何らかの症状が出現する場合は、運動を中止する。
頸椎リアライメント(首を整える)
胸椎を動かしたあとに行います。縮んでいる頚椎中下部の前側の筋肉、頚椎上部の後ろ側の筋肉を伸ばすことを狙ったエクササイズです。
- 【方法】
- ①両手にタオルを持ち、首の後ろに当てる(胸を軽く張った姿勢で)
- ②首の前を伸ばすイメージで、頚椎全体を伸展させる(タオルを軽く前に引く)
- ③喉仏に向かって、顎を引く(二重顎をつくる感覚)
- ※5-10回程度繰り返す

- 【注意点】
- ◉首の痛みや腕のしびれが強い方は実施しない。
- ◉首を力ずくで伸展させない。動きは小さくてOK。
- ◉めまい、ふらつき、手のしびれ、頭痛の増強が現れた場合は、すぐに中止する。
⑤まとめ
今回は、ストレートネックとその原因について解説しました。
「ストレートネック」は日本で広く使われる言葉ですが、症状がない方もいれば、日常生活に支障をきたしている方もいます。大切なのは、その方が実際にどのような症状を抱えているかを個別に見極め、身体への負荷を評価していくことです。
ご自身の姿勢のクセや、身体のどこに問題があるかを正確に把握するのは、なかなか難しいものです。特に、デスクワーク中心の職場では、社員の皆様が気づかないうちに症状を抱えているケースが多く見られます。
弊社では、企業様のオフィスに直接出張し、社員様おひとりおひとりの身体の状態をチェックしたうえで、その方に合ったストレッチを提供し、身体的な不調の改善をサポートするサービスを行っております。
また、ヘルスリテラシー向上のためのセミナーやイベント、グループセッションなどのご提案も行っております。「社員の健康づくりに本格的に取り組みたい」「職場のパフォーマンスや働きやすさを高めたい」とお考えの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
〈記事執筆〉

吉田 亮太郎
【保有資格・修了】
理学療法士
NSCA-CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
外来整形外科にて数多くのリハビリや運動指導に携わる。
またトレーナーとして、一般層から高校野球選手まで、幅広い層へのトレーニングやコンディショニングの提供を行なっている。
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